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text:k_konjaku:k_konjaku6-2 [2016/10/06 22:36] – 作成 Satoshi Nakagawatext:k_konjaku:k_konjaku6-2 [2018/05/24 12:21] (現在) – [巻6第2話 震旦後漢明帝時仏法渡語 第二] Satoshi Nakagawa
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 今昔、震旦の後漢の明帝の時に、天皇、夢に見給はく、金色の人の長一丈余許なる来ると。 今昔、震旦の後漢の明帝の時に、天皇、夢に見給はく、金色の人の長一丈余許なる来ると。
  
-夢覚て後、智(さと)り有る大臣を召して、此の夢の相を問給ふ。大臣、申して云く、「他国より、止事無き聖人来べき相也」と。天皇、此れを聞給てより、心に係て待給ふ間に、天竺より僧来れり。名をば、摩騰迦・竺法蘭と云ふ。仏舎利、及び正教、多く具し奉たり。即ち、天皇に奉る。天皇、此の人を待ち得給て、心に喜て、帰依し給ふ事限無し。+夢覚て後、智(さと)り有る大臣を召して、此の夢の相を問給ふ。大臣、申して云く、「他国より、止事無き聖人来べき相也」と。天皇、此れを聞給てより、心に係て待給ふ間に、天竺より僧来れり。名をば、摩騰迦((迦葉摩騰))・竺法蘭と云ふ。仏舎利、及び正教、多く具し奉たり。即ち、天皇に奉る。天皇、此の人を待ち得給て、心に喜て、帰依し給ふ事限無し。
  
 其の時に、此の事を受けぬ大臣・公卿、多かり。何況や、五岳の道士と云ふ者、其の数有り。「我が立る道を以て、国王より始奉り、人民に至るまで、国の内の上中下の人、皆此の道を止事無き事として、古より今に至るまで、国挙て崇めらるるに、忽に異国より来れる、形も替り衣服も異なる、心も得ぬ者の、由無き文共を具して来れるを、天皇、崇めしめ給ふは、極て安からぬ事」と思て、歎き合へる也。世にも、亦、此れを謗るなるべし。 其の時に、此の事を受けぬ大臣・公卿、多かり。何況や、五岳の道士と云ふ者、其の数有り。「我が立る道を以て、国王より始奉り、人民に至るまで、国の内の上中下の人、皆此の道を止事無き事として、古より今に至るまで、国挙て崇めらるるに、忽に異国より来れる、形も替り衣服も異なる、心も得ぬ者の、由無き文共を具して来れるを、天皇、崇めしめ給ふは、極て安からぬ事」と思て、歎き合へる也。世にも、亦、此れを謗るなるべし。
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 天皇、此の事を聞給ふに、胸塞て、歎き思す、「此の道士の立る道は、天の事をも、地の事をも、善く勘へ出して知る道也。異国より来れる僧は、未だ善悪を知らねば、極て不審(おぼつかな)し。術を競べむに、若し天竺の僧負なば、極て悲かるべし」。 天皇、此の事を聞給ふに、胸塞て、歎き思す、「此の道士の立る道は、天の事をも、地の事をも、善く勘へ出して知る道也。異国より来れる僧は、未だ善悪を知らねば、極て不審(おぼつかな)し。術を競べむに、若し天竺の僧負なば、極て悲かるべし」。
  
-然れば、「速に競ふべし」とも宣はずして、先づ摩騰法師を召して、仰せ給ふ様、「此の国に、本より崇めらるる五岳の道士と云ふ者共は、嫉妬の心を発して、此の如き申す。何なるべき事ぞ」と。摩騰法師、答て云く、「我が持(たも)つ所の法は、古より術競をして、人に崇めらるる事也。然れば、速に此の度び合せて、勝負を御覧ずべし」と申して、喜ぶ事限無し。天皇も、此れを聞て、亦喜び思(おぼ)す。日を定て、速に摩騰法師と道士と、殿の前の庭にして術競有るべき由、宣旨を□□((底本頭注「宣旨ヲノ下一本賜ルニ作リ又一本下シニ作ル))。+然れば、「速に競ふべし」とも宣はずして、先づ摩騰法師を召して、仰せ給ふ様、「此の国に、本より崇めらるる五岳の道士と云ふ者共は、嫉妬の心を発して、此の如き申す。何なるべき事ぞ」と。摩騰法師、答て云く、「我が持(たも)つ所の法は、古より術競をして、人に崇めらるる事也。然れば、速に此の度び合せて、勝負を御覧ずべし」と申して、喜ぶ事限無し。天皇も、此れを聞て、亦喜び思(おぼ)す。日を定て、速に摩騰法師と道士と、殿の前の庭にして術競有るべき由、宣旨を□□((底本頭注「宣旨ヲノ下一本賜ルニ作リ又一本下シニ作ル))。
  
 其の日に成て、国挙て、上中下の人、見る事限無し。東の方には、錦の幄を長く起てて、其の内に止事無き道士、二千人許並居たり。髪□□((底本頭注「髪ノ下一本長クニ作リ又一本白クニ作ル」))年老たる者共も有り。或は、若く盛なる者共も有り。各才を営み立てて、古に恥ぢず。亦、大臣・公卿・孫子((底本頭注「孫子ノ二字誤アラン」))・百官、皆道士の方に寄れり。文書に付て、勘へ出して為る事共の実に顕はに、三世の事共を知る様に持成せば也。摩騰法師の方には、只大臣一人寄れり。其の外には、更に寄れる人無し。但し、天皇を心寄せに思ひ給ひけり。 其の日に成て、国挙て、上中下の人、見る事限無し。東の方には、錦の幄を長く起てて、其の内に止事無き道士、二千人許並居たり。髪□□((底本頭注「髪ノ下一本長クニ作リ又一本白クニ作ル」))年老たる者共も有り。或は、若く盛なる者共も有り。各才を営み立てて、古に恥ぢず。亦、大臣・公卿・孫子((底本頭注「孫子ノ二字誤アラン」))・百官、皆道士の方に寄れり。文書に付て、勘へ出して為る事共の実に顕はに、三世の事共を知る様に持成せば也。摩騰法師の方には、只大臣一人寄れり。其の外には、更に寄れる人無し。但し、天皇を心寄せに思ひ給ひけり。
text/k_konjaku/k_konjaku6-2.txt · 最終更新: 2018/05/24 12:21 by Satoshi Nakagawa