text:k_konjaku:k_konjaku5-13
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text:k_konjaku:k_konjaku5-13 [2016/09/13 18:02] – 作成 Satoshi Nakagawa | text:k_konjaku:k_konjaku5-13 [2016/09/22 17:18] (現在) – [巻5第13話 三獣行菩薩道兎焼身語 第十三] Satoshi Nakagawa | ||
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====== 巻5第13話 三獣行菩薩道兎焼身語 第十三 ====== | ====== 巻5第13話 三獣行菩薩道兎焼身語 第十三 ====== | ||
- | 今昔、天竺に兎・狐・猿、三の獣有て、友に誠の心を発して、菩薩の道を行ひけり。各思はく、「我等、前世に罪障深重にして、賤き獣と生たり。此れ、前世に生有る者を哀れまず、財物を惜て人に与へず、此の如くの罪み重くして、地獄に堕て、苦を久く受て、残の報にかく生れたる也。然れば、此の度び、此の身を捨てむ」。年し、我より老たるをば、祖の如くに敬ひ、年、我より少し進たるをば、兄の如くにし、年、我より少し劣たるをば、弟の如く哀び、自らの事をば捨てて、他の事を前とす。 | + | 今昔、天竺に兎・狐・猿、三の獣有て、共に誠の心を発して、菩薩の道を行ひけり。各思はく、「我等、前世に罪障深重にして、賤き獣と生たり。此れ、前世に生有る者を哀れまず、財物を惜て人に与へず、此の如くの罪み重くして、地獄に堕て、苦を久く受て、残の報にかく生れたる也。然れば、此の度び、此の身を捨てむ」。年し、我より老たるをば、祖の如くに敬ひ、年、我より少し進たるをば、兄の如くにし、年、我より少し劣たるをば、弟の如く哀び、自らの事をば捨てて、他の事を前とす。 |
天帝釈、此れを見給て、「此等、獣の身也と云へども、有難き心也。人の身を受たりと云へども、或は生たる者を殺し、或は人の財を奪ひ、或は父母を殺し、或は兄弟を讎敵の如く思ひ、或は咲(ゑみ)の内にも悪しき思ひ有り、或は慈(いつくしび)たる形にも嗔れる心深し。何況や、此の獣は、実の心深く思ひ難し。然らば試む」と思して、忽に老たる翁の、無力にして、羸(つか)れ術無気なる形に変じて、此の三の獣の有る所に至給て宣はく、「我れ、年老ひ羸れて、為む方無し。汝達三の獣、我れを養ひ給へ。我れ、子無く、家貧くして、食物無し。聞けば、汝達三の獣、哀びの心深く有り」と。 | 天帝釈、此れを見給て、「此等、獣の身也と云へども、有難き心也。人の身を受たりと云へども、或は生たる者を殺し、或は人の財を奪ひ、或は父母を殺し、或は兄弟を讎敵の如く思ひ、或は咲(ゑみ)の内にも悪しき思ひ有り、或は慈(いつくしび)たる形にも嗔れる心深し。何況や、此の獣は、実の心深く思ひ難し。然らば試む」と思して、忽に老たる翁の、無力にして、羸(つか)れ術無気なる形に変じて、此の三の獣の有る所に至給て宣はく、「我れ、年老ひ羸れて、為む方無し。汝達三の獣、我れを養ひ給へ。我れ、子無く、家貧くして、食物無し。聞けば、汝達三の獣、哀びの心深く有り」と。 |
text/k_konjaku/k_konjaku5-13.txt · 最終更新: 2016/09/22 17:18 by Satoshi Nakagawa