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text:k_konjaku:k_konjaku3-27 [2016/07/16 15:35] – 作成 Satoshi Nakagawatext:k_konjaku:k_konjaku3-27 [2016/07/16 16:40] (現在) – [巻3第27話 阿闍世王殺父王語 第(廿七)] Satoshi Nakagawa
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 其の時に菴羅衛女の菴羅衛の子に、耆婆大臣と云ふ人有り。闍王((阿闍世王))の前に進み出て申さく、「我が君、何に思して、かかる大逆罪をば造り給ふ。毗陀論経に云く、『劫初より以来、世に悪王有て、王位を貪るが為に父を殺す事、一万八千人也』。但し、未だ曾て聞かず。無道に母を害せる人をば。大王、猶善く思惟せしめ給て、此の悪逆を止め給へ」と。王、此の事を聞て、大に恐れて、釼を捨て母を害せず成ぬ。父の王は遂に死す。 其の時に菴羅衛女の菴羅衛の子に、耆婆大臣と云ふ人有り。闍王((阿闍世王))の前に進み出て申さく、「我が君、何に思して、かかる大逆罪をば造り給ふ。毗陀論経に云く、『劫初より以来、世に悪王有て、王位を貪るが為に父を殺す事、一万八千人也』。但し、未だ曾て聞かず。無道に母を害せる人をば。大王、猶善く思惟せしめ給て、此の悪逆を止め給へ」と。王、此の事を聞て、大に恐れて、釼を捨て母を害せず成ぬ。父の王は遂に死す。
  
-其の後、仏、鳩尸那城抜提河の辺り、沙羅林の中に在まして、大涅槃の教法を説き給ふ。其の時に、耆婆大臣、闍王を教て云く、「君み、逆罪を造り給へり。必ず地獄に堕給ひなむとす。此の比、仏け、鳩尸那城抜提河の辺り、沙羅林の中に在して、常住仏性の教法を説て、一切衆生を利益し給ふ。速に其の所に参り給て、其の罪を懺悔し給へ」と。闍王の云く、「我れ、既に父を殺てき。仏、更に我を吉しと思さじ。又、我を見給ふ事非じ」と。耆婆大臣の云く、「仏は善を修するをも見給ふ。悪を造るをも見給ふ。一切衆生の為に、平等一子の悲を垂れ給ふ也。只参り給へ」と。闍王の云く、「我れ、逆罪を造れり。決定して無間地獄に堕なむとす。仏を見奉ると云へども、罪滅せむ事難し。又、我れ、既に年老にたり。仏の御許に参て、今更に恥を見む事、極て益無し」と。大臣の云く、「君、此の度び仏を見奉り給て、父を殺せる罪を滅し給はずば、何れの世にか罪を滅し給はむ。無間地獄に堕入り給なば、更に出る期非じ。猶必ず参り給へ」と寧(ねんごろ)に勧む。+其の後、仏、鳩尸那城((拘尸那城))抜提河の辺り、沙羅林の中に在まして、大涅槃の教法を説き給ふ。其の時に、耆婆大臣、闍王を教て云く、「君み、逆罪を造り給へり。必ず地獄に堕給ひなむとす。此の比、仏け、鳩尸那城抜提河の辺り、沙羅林の中に在して、常住仏性の教法を説て、一切衆生を利益し給ふ。速に其の所に参り給て、其の罪を懺悔し給へ」と。闍王の云く、「我れ、既に父を殺てき。仏、更に我を吉しと思さじ。又、我を見給ふ事非じ」と。耆婆大臣の云く、「仏は善を修するをも見給ふ。悪を造るをも見給ふ。一切衆生の為に、平等一子の悲を垂れ給ふ也。只参り給へ」と。闍王の云く、「我れ、逆罪を造れり。決定して無間地獄に堕なむとす。仏を見奉ると云へども、罪滅せむ事難し。又、我れ、既に年老にたり。仏の御許に参て、今更に恥を見む事、極て益無し」と。大臣の云く、「君、此の度び仏を見奉り給て、父を殺せる罪を滅し給はずば、何れの世にか罪を滅し給はむ。無間地獄に堕入り給なば、更に出る期非じ。猶必ず参り給へ」と寧(ねんごろ)に勧む。
  
 其の時に、仏の御光、沙羅林より阿闍世王の身を指して照す時に、闍王の云く、「劫の終りにより、日月三つ出て、世を照すべかなれ。若し、劫の終りたるか。月の光り、我が身を照す」と。大臣の云く、「大王、聞き給へ。譬ば、人に数(あまた)の子有り。其の中に病有り。片輪有るを、父母、懃(ねんごろ)に養育す。大王、既に父を殺し給へる罪重し。譬ば、人の子の病重きに非ずや。仏は一子の悲び在ます。大王を利益し給はむが為に、指し給へる所の光ならむ」と。闍王の云く、「然れば、試みに仏の御許へ参らむ。汝も我に具せよ。我れ五逆罪を造(つくれ)り。道行かむ間に、大地割て地獄にもぞ堕入る。若し然る事有らば、汝を捕へむ」と云て、闍王、大臣を具して、仏の御許に参らむとす。 其の時に、仏の御光、沙羅林より阿闍世王の身を指して照す時に、闍王の云く、「劫の終りにより、日月三つ出て、世を照すべかなれ。若し、劫の終りたるか。月の光り、我が身を照す」と。大臣の云く、「大王、聞き給へ。譬ば、人に数(あまた)の子有り。其の中に病有り。片輪有るを、父母、懃(ねんごろ)に養育す。大王、既に父を殺し給へる罪重し。譬ば、人の子の病重きに非ずや。仏は一子の悲び在ます。大王を利益し給はむが為に、指し給へる所の光ならむ」と。闍王の云く、「然れば、試みに仏の御許へ参らむ。汝も我に具せよ。我れ五逆罪を造(つくれ)り。道行かむ間に、大地割て地獄にもぞ堕入る。若し然る事有らば、汝を捕へむ」と云て、闍王、大臣を具して、仏の御許に参らむとす。
text/k_konjaku/k_konjaku3-27.txt · 最終更新: 2016/07/16 16:40 by Satoshi Nakagawa