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text:k_konjaku:k_konjaku29-36 [2015/03/24 17:44] – 作成 Satoshi Nakagawatext:k_konjaku:k_konjaku29-36 [2015/03/24 17:46] (現在) – [巻29第36話 於鈴香山蜂螫殺盗人語 第卅六] Satoshi Nakagawa
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 就中に、伊勢の国は、極き父母が物をも奪取り、親き踈きをも云はず、貴きも賤きも簡(えら)ばず、互に隙を量て魂を暗まして、弱き者の持たる物をば憚らず奪取て、己が貯と為る所也。其れに、此の水銀商が此く昼夜に行くを、何(いか)なる事にか、物をのみなむ取らざりける。 就中に、伊勢の国は、極き父母が物をも奪取り、親き踈きをも云はず、貴きも賤きも簡(えら)ばず、互に隙を量て魂を暗まして、弱き者の持たる物をば憚らず奪取て、己が貯と為る所也。其れに、此の水銀商が此く昼夜に行くを、何(いか)なる事にか、物をのみなむ取らざりける。
  
-而る間、何也ける盗人にか有けむ、八十余人心を同くして、鈴香の山にて、国々の行来の人の物を奪ひ、公け私の財を取て、皆其の人を殺して年月を送ける程に、公も国の司も、此れを追捕せらるる事も否(え)無かりけるに、其の時に、此の水銀商、伊勢の国より、馬百余疋に諸の財を負せて、前々の様に小童部を以て追せて、女共など具して、食物などせさせて上ける程に、此の八十余人の盗人、「極き白物(しれもの)かな。此の者共、皆奪取らむ」と思て、彼の山の中にして、前後に有て中に立挟めて恐しければ、小童部は皆逃て去にけり。物負せたる馬共、皆追取つ。女共をば、皆着たる衣共を剥取て、追棄てけり。+而る間、何也ける盗人にか有けむ、八十余人心を同くして、鈴香の山((鈴鹿山))にて、国々の行来の人の物を奪ひ、公け私の財を取て、皆其の人を殺して年月を送ける程に、公も国の司も、此れを追捕せらるる事も否(え)無かりけるに、其の時に、此の水銀商、伊勢の国より、馬百余疋に諸の財を負せて、前々の様に小童部を以て追せて、女共など具して、食物などせさせて上ける程に、此の八十余人の盗人、「極き白物(しれもの)かな。此の者共、皆奪取らむ」と思て、彼の山の中にして、前後に有て中に立挟めて恐しければ、小童部は皆逃て去にけり。物負せたる馬共、皆追取つ。女共をば、皆着たる衣共を剥取て、追棄てけり。
  
 水銀商は、浅黄の打衣に青黒の打狩袴を着て、練色の衣の綿厚らかなる三つ許を着て、草馬に乗て有けるが、辛くして逃て、高き岳に打上にけり。盗人も此れを見けれども、「為べき事無き者なめり」と思ひ下して、皆谷に入にけり。 水銀商は、浅黄の打衣に青黒の打狩袴を着て、練色の衣の綿厚らかなる三つ許を着て、草馬に乗て有けるが、辛くして逃て、高き岳に打上にけり。盗人も此れを見けれども、「為べき事無き者なめり」と思ひ下して、皆谷に入にけり。
text/k_konjaku/k_konjaku29-36.1427186671.txt.gz · 最終更新: 2015/03/24 17:44 by Satoshi Nakagawa