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text:k_konjaku:k_konjaku28-4 [2015/02/07 20:26] – 作成 Satoshi Nakagawatext:k_konjaku:k_konjaku28-4 [2015/02/07 20:27] (現在) – [巻28第4話 尾張守□□五節所語 第四] Satoshi Nakagawa
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 而る間、若き殿上人ども、宿直所に□居て、各云ひ合たる様、「此の尾張の五節所は、物の色など微妙くし立たる物かな。童傅も、今年の五節には、此れぞ勝れたる。但し、此の守の一家に、内辺の事を未だ聞にも聞かず、亦見ざりければ、露の事を恋(こひし)がりて、追しらがひて、出て見る。亦、我等に恐れて、近く寄れば隠れ騒ぐは、嗚呼(をこ)に極き物かな。去来(いざ)、此れ謀て弥よ恐れ迷はさむ。何が為べき」と。一人の殿上人の云く、「□□」。亦、或る殿上人の云く、「恐(かしこ)き様有り」と。「何に云はむと為るぞ」と問へば、「彼の五節所に行て、得意立て告べき様は、『此の五節所をば、殿上人達極く咲ふぞ。然か知り給へ。『此の五節所咲はむ』とて、殿上人達の謀る様は、有と有る殿上人、『此の五節所を恐さむ』とて、皆、紐を解て襴(なほし)・表衣を脱下て、五節所の前に立並て、歌を作て歌はむと為る也。其の作たる様は、 而る間、若き殿上人ども、宿直所に□居て、各云ひ合たる様、「此の尾張の五節所は、物の色など微妙くし立たる物かな。童傅も、今年の五節には、此れぞ勝れたる。但し、此の守の一家に、内辺の事を未だ聞にも聞かず、亦見ざりければ、露の事を恋(こひし)がりて、追しらがひて、出て見る。亦、我等に恐れて、近く寄れば隠れ騒ぐは、嗚呼(をこ)に極き物かな。去来(いざ)、此れ謀て弥よ恐れ迷はさむ。何が為べき」と。一人の殿上人の云く、「□□」。亦、或る殿上人の云く、「恐(かしこ)き様有り」と。「何に云はむと為るぞ」と問へば、「彼の五節所に行て、得意立て告べき様は、『此の五節所をば、殿上人達極く咲ふぞ。然か知り給へ。『此の五節所咲はむ』とて、殿上人達の謀る様は、有と有る殿上人、『此の五節所を恐さむ』とて、皆、紐を解て襴(なほし)・表衣を脱下て、五節所の前に立並て、歌を作て歌はむと為る也。其の作たる様は、
  
-  鬢だたらをあゆかせばこそゆかせばこそ愛敬付たれ((底本頭注「鬢ダタラハ郢曲ナリ今万葉緯ニヨリテ訂シツ))+  鬢だたらをあゆかせばこそゆかせばこそ愛敬付たれ((底本頭注「鬢ダタラハ郢曲ナリ今万葉緯ニヨリテ訂シツ))
  
 と。此の〈鬢だたら〉と云は、守の主の毛清く鬢の落たるを、かかる鬢だたらして、五節所に若き女房の中に交り居給たるを、歌はむずる也。〈あゆかせばこそ愛敬付たれ〉と云は、守の後向て歩び給が□□やかなるを、歌はむずる也。此く告申す事をば、実とも信じ給はじ。其れは、明日の未申の時許に、殿上人・蔵人の有る限り、皆褊(かたぬぎ)て、襴・表の衣を皆腰からみて、長(おとなしき)・若きとも云はず、此れを歌ひて寄来る者ならば、此に申す事を実也けりと信じ給へ』と告げむと思ふぞ」と云へば、異殿上人、「実に和君行て、利口に云ひ聞せよ」と云ひ契て、散ぬ。 と。此の〈鬢だたら〉と云は、守の主の毛清く鬢の落たるを、かかる鬢だたらして、五節所に若き女房の中に交り居給たるを、歌はむずる也。〈あゆかせばこそ愛敬付たれ〉と云は、守の後向て歩び給が□□やかなるを、歌はむずる也。此く告申す事をば、実とも信じ給はじ。其れは、明日の未申の時許に、殿上人・蔵人の有る限り、皆褊(かたぬぎ)て、襴・表の衣を皆腰からみて、長(おとなしき)・若きとも云はず、此れを歌ひて寄来る者ならば、此に申す事を実也けりと信じ給へ』と告げむと思ふぞ」と云へば、異殿上人、「実に和君行て、利口に云ひ聞せよ」と云ひ契て、散ぬ。
text/k_konjaku/k_konjaku28-4.1423308418.txt.gz · 最終更新: 2015/02/07 20:26 by Satoshi Nakagawa