ユーザ用ツール

サイト用ツール


text:k_konjaku:k_konjaku28-2

差分

このページの2つのバージョン間の差分を表示します。

この比較画面へのリンク

text:k_konjaku:k_konjaku28-2 [2015/02/07 00:04] – 作成 Satoshi Nakagawatext:k_konjaku:k_konjaku28-2 [2020/09/21 13:13] (現在) – [巻28第2話 頼光郎等共紫野見物語 第二] Satoshi Nakagawa
行 14: 行 14:
 此て、既に紫野に行着て、車掻下して立てば、余り疾く行て立つれば、事成るを待つ程に、此の者共、車に酔ひたる心地共なれば、極て心地悪く成て、目転(くるめき)て、万の物逆様に見ゆ。痛く酔にければ、三人乍ら、尻を逆様にて寝入にけり。 此て、既に紫野に行着て、車掻下して立てば、余り疾く行て立つれば、事成るを待つ程に、此の者共、車に酔ひたる心地共なれば、極て心地悪く成て、目転(くるめき)て、万の物逆様に見ゆ。痛く酔にければ、三人乍ら、尻を逆様にて寝入にけり。
  
-而る間に、事成て、物共渡るを、死たる様に寝たる者共なれば、露知らで止ぬ。事畢て、車共懸け騒ぐ時になむ、目悟めて驚たりける。心地は悪し、寝入て物は見ず成ぬれば、腹立しく妬たく思ふ事限無きに、「亦、返さの車、飛ばし騒むに、我等は生ては有なむや。千人の軍の中に馬を走らせて入らむ事は、常に習たる事なれば、怖れず。只、貧窮気(まづしげ)なる牛飼い童の奴独に身を任せて、此く掕ぜられては、何のの有るべきぞ。此の車にて、亦返らば、我等が命は有なむや。然れば、只、暫し此て有らむ。然て、大路を澄して、歩より行くべき也」と定めて、人澄て後、三人乍ら、車より下ぬれば、車は返し遣つ。+而る間に、事成て、物共渡るを、死たる様に寝たる者共なれば、露知らで止ぬ。事畢て、車共懸け騒ぐ時になむ、目悟めて驚たりける。心地は悪し、寝入て物は見ず成ぬれば、腹立しく妬たく思ふ事限無きに、「亦、返さの車、飛ばし騒むに、我等は生ては有なむや。千人の軍の中に馬を走らせて入らむ事は、常に習たる事なれば、怖れず。只、貧窮気(まづしげ)なる牛飼い童の奴独に身を任せて、此く掕ぜられては、何のの有るべきぞ。此の車にて、亦返らば、我等が命は有なむや。然れば、只、暫し此て有らむ。然て、大路を澄して、歩より行くべき也」と定めて、人澄て後、三人乍ら、車より下ぬれば、車は返し遣つ。
  
 其の後、皆□□を履て、烏帽子を鼻の許に引入れて、扇を以て顔を塞てぞ、摂津の守の一条の家には返たりける。 其の後、皆□□を履て、烏帽子を鼻の許に引入れて、扇を以て顔を塞てぞ、摂津の守の一条の家には返たりける。
text/k_konjaku/k_konjaku28-2.txt · 最終更新: 2020/09/21 13:13 by Satoshi Nakagawa