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text:k_konjaku:k_konjaku19-23 [2016/02/18 20:34] – 作成 Satoshi Nakagawatext:k_konjaku:k_konjaku19-23 [2019/09/02 16:00] (現在) – [巻19第23話 般若寺覚縁律師弟子僧信師遺言語 第廿三] Satoshi Nakagawa
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 此く微妙に此の寺に住む程に、身に何とも無き病を受つ。暫は風など云て、湯治など為れども、弥よ増(まさり)て、態と煩て臥ぬれば、弟子共、皆集て、傍に祈祷する事限無し。殿原・宮原よりも、訪ひに御使給はぬ日無し。年は若し、形は美麗也。才も賢く、験も有れば、世の人、皆憑を懸たる人多くして、惜み合へるも理也。其の中にも、法花経を空に思て、極めて貴く読みければ、聞く人、涙を落さぬは無りけり。 此く微妙に此の寺に住む程に、身に何とも無き病を受つ。暫は風など云て、湯治など為れども、弥よ増(まさり)て、態と煩て臥ぬれば、弟子共、皆集て、傍に祈祷する事限無し。殿原・宮原よりも、訪ひに御使給はぬ日無し。年は若し、形は美麗也。才も賢く、験も有れば、世の人、皆憑を懸たる人多くして、惜み合へるも理也。其の中にも、法花経を空に思て、極めて貴く読みければ、聞く人、涙を落さぬは無りけり。
  
-此の病の間にも、力無き音を以て、経をぞ夜る昼る読み奉ける間、病、無下に重く成ぬれば、弟子共に、各、没落の後の事、云知らしめけるに、此の房の微妙き事共を、誰にも云付ざりければ、「中に上臈なる人の知らむずるなめり」と思て、皆人有けるに、公円と云ふ弟子有り。極て僻者にて有ければ、前にも出さずして、常に勘当にて有ければ、所々に修行して有けるに、其の此、勝尾と云ふ所に籠たりける程、「師の律師、煩ひ給ふ」と人の告ければ、驚て来て、居りけるに、明日に死なむとての日、然るべき弟子共の、其の員居並たるをば置て、「人員にも非で、悪((「にく」底本異体字。りっしんべんに惡))まれつる公円は有やする」と、律師、気の下に問はれければ、「参て、此の四五日候へども、憚て御前にも罷出ねば、後の壺屋などに候にや」と弟子の云ければ、「其れ此方に呼べ」と云へば、呼び出したり。+此の病の間にも、力無き音を以て、経をぞ夜る昼る読み奉ける間、病、無下に重く成ぬれば、弟子共に、各、没後の事、云知らしめけるに、此の房の微妙き事共を、誰にも云付ざりければ、「中に上臈なる人の知らむずるなめり」と思て、皆人有けるに、公円と云ふ弟子有り。極て僻者にて有ければ、前にも出さずして、常に勘当にて有ければ、所々に修行して有けるに、其の此、勝尾と云ふ所に籠たりける程、「師の律師、煩ひ給ふ」と人の告ければ、驚て来て、居りけるに、明日に死なむとての日、然るべき弟子共の、其の員居並たるをば置て、「人員にも非で、悪((「にく」底本異体字。りっしんべんに惡))まれつる公円は有やする」と、律師、気の下に問はれければ、「参て、此の四五日候へども、憚て御前にも罷出ねば、後の壺屋などに候にや」と弟子の云ければ、「其れ此方に呼べ」と云へば、呼び出したり。
  
 止事無き弟子共の居並たる中を分けて、呼び寄ぬれば、此れを見る人共、「世経て悪((「にく」底本異体字。りっしんべんに惡))まれつる者を、此く召し寄する事、何事にか有らむ」と、怪く皆思ひたり。 止事無き弟子共の居並たる中を分けて、呼び寄ぬれば、此れを見る人共、「世経て悪((「にく」底本異体字。りっしんべんに惡))まれつる者を、此く召し寄する事、何事にか有らむ」と、怪く皆思ひたり。
text/k_konjaku/k_konjaku19-23.txt · 最終更新: 2019/09/02 16:00 by Satoshi Nakagawa