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text:jikkinsho:s_jikkinsho11-00
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text:jikkinsho:s_jikkinsho11-00 [2016/04/27 21:52] (現在) – 作成 Satoshi Nakagawa
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 +十訓抄
 +====== 跋 ======
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 +===== 校訂本文 =====
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 +そもそも、難波の言の葉の、よしあしにつけつつ、昔今の物語を集め見るに、その身はさながら苔の下に朽ちにければ、わづかに埋(うづ)もれぬ名ばかりを、しるしとどむるあはれさに、なきは数そふ世のありさま、思ひつづけられて、「いつか身の上に」とのみ心細し。
 +
 +夢なり。幻なり。古人去りて帰らず。有とやせん、無とやせん。旧友かくれて、残り少なし。
 +
 +かの『文選』といふ文に、「冉々((底本「前々」。諸本により訂正。))として行き暮れぬ。水、滔々として、日々にわたる」とあるこそ、まことに理(ことわり)なれ。常(つね)なく移りゆく世の中を聞き見るに、たきついはせの河浪の、すみやかに流れ行きて、とまらざるにことならず。
 +
 +かかれば、歌にも、「流れて早き月日なりけり」とも詠み、詩にはまた、「水は返る夕(ゆふべ)なし、流年の涙」とも作り、法文には、「人命不停過於山水」ともあるやらん。
 +
 +しづのをだまきくりかへし、昔を今になしがたき習ひにて、わが世も、人の世も、ただあだなる仮の宿(やど)なれば、かかる筆のすさみまで、いつか「昔の跡」と言はれんと、あはれにあぢきなく思えてなん。
 +
 +===== 翻刻 =====
 +
 +  抑ナニハノコトノハノヨシアシニツケツツ、昔今ノ物語ヲ
 +  集メ見ニ、其身ハサナカラ苔ノ下ニ朽ニケレハ、僅ニウツ
 +  モレヌ名ハカリヲシルシトトムルアハレサニ、ナキハカスソ
 +  フ世ノ有サマ、思ツツケラレテ、イツカミノ上ニトノミ心
 +  ホソシ、夢也幻也、古人去テ不帰、有トヤセン無トヤ
 +  セン、旧友カクレテ残スクナシ、彼文選ト云文ニ前々ト
 +  シテ行クレヌ、水滔々トシテ日々ニワタルトアルコソ、実
 +  ニ理ナレ、ツネナクウツリユク世中ヲキキ見ニ、タキツ
 +  イハセノ河浪ノ、速ニ流行テトマラサルニコトナラスカ/k143
 +
 +  カレハ哥ニモ、流テハヤキ月日ナリケリトモヨミ、詩ニハ
 +  又水ハ返夕ナシ流年ノ涙トモ作リ、法文ニハ人ノ命不
 +  停過於山水トモ有ヤラン、シツノヲタマキクリカヘシ、昔ヲ
 +  今ニナシカタキ習ニテ、我世モ人ノ世モ、タタアタナルカリ
 +  ノヤトナレハ、カカル筆ノスサミマテ、イツカ昔ノアトトイハレン
 +  ト、哀ニアチキナク覚テナン、/k144
  
text/jikkinsho/s_jikkinsho11-00.txt · 最終更新: 2016/04/27 21:52 by Satoshi Nakagawa