text:jikkinsho:s_jikkinsho10-77
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— | text:jikkinsho:s_jikkinsho10-77 [2016/04/26 16:39] (現在) – 作成 Satoshi Nakagawa | ||
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+ | 十訓抄 第十 才芸を庶幾すべき事 | ||
+ | ====== 10の77 白河院の御時九重塔の金物を牛の皮にて作れりといふこと・・・ ====== | ||
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+ | ===== 校訂本文 ===== | ||
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+ | 白河院((白河天皇))の御時、「九重塔の金物を、牛の皮にて作れり」といふこと、世に聞こえて、修理したる人、定綱朝臣((藤原定綱))、ことにあふべきよし、聞こえたり。 | ||
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+ | 仏師なにがしといふもの召して、「たしかに、まこと・そらごとを見て、ありのままに奏せよ」と仰せられければ、承りて上りけるを、半(なか)らのほどより返り下りて、涙を流して、色を失ひて、「身のあればこそ、君にも仕へ奉れ。肝心失せて、黒白見分くべき心地も侍らず」と言ひもやらず、わななきけり。 | ||
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+ | 君、聞こしめして、笑はせ給ひて、ことなる沙汰なくて、やみにけり。 | ||
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+ | かの韋仲将((韋誕))が、凌雲台に上りけん心地も、かくやありけんと思ゆ。 | ||
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+ | 時の人、いみじき嗚呼(をこ)のためしに言ひけるを、顕隆卿((藤原顕隆))聞きて、「こやつは必ず冥加あるべき者なり。人の罪蒙るべきことの罪を知りて、みづから嗚呼の者となれる、やんごとなき思ひはかりなり」とぞ、ほめられける。 | ||
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+ | まことに久しく君に仕へ奉りて、ことなかりけり。 | ||
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+ | ===== 翻刻 ===== | ||
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+ | 七十九白河院御時九重塔金物ヲ、牛ノ皮ニテ作レリト云 | ||
+ | 事世ニキコエテ、修理シタル人定綱朝臣事ニアフ | ||
+ | ヘキヨシ聞タリ、仏師ナニカシト云モノ召テ慥ニマコト | ||
+ | ソラコトヲミテ、有ノママニ奏セヨト被仰ケレハ承テ上/k137 | ||
+ | |||
+ | リケルヲ、ナカラノ程ヨリ返リオリテ、涙ヲ流シテ色 | ||
+ | ヲ失テ、身ノアレハコソ君ニモ仕奉レ、肝心ウセテ黒 | ||
+ | 白ミワクヘキ心地モ侍ラスト云モヤラス、ワナナキケリ、 | ||
+ | 君聞食テワラハセ給テ、コトナル沙汰ナクテヤミニケ | ||
+ | リ、彼韋仲将カ凌雲台ニ上リケン心地モカクヤ有 | ||
+ | ケントオホユ、時人イミシキオコノタメシニ云ケルヲ、顕 | ||
+ | 隆卿聞テ、コヤツハ必冥加アルヘキモノ也、人ノ罪蒙ルヘ | ||
+ | キ事ノツミヲ知テ、ミツカラ嗚呼ノモノトナレル、ヤン | ||
+ | 事ナキ思ハカリナリトソホメラレケル、誠ニ久ク君ニ仕ヘ | ||
+ | 奉リテ事ナカリケリ、又賞アルヘカラン事アナカチ/k138 | ||
text/jikkinsho/s_jikkinsho10-77.txt · 最終更新: 2016/04/26 16:39 by Satoshi Nakagawa