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text:jikkinsho:s_jikkinsho10-54
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text:jikkinsho:s_jikkinsho10-54 [2016/04/05 17:19] (現在) – 作成 Satoshi Nakagawa
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 +十訓抄 第十 才芸を庶幾すべき事
 +====== 10の54 またもとより猛き人の家に生れぬる養由が芸を継ぎ・・・ ======
 +
 +===== 校訂本文 =====
 +
 +また、もとより猛き人の家に生れぬる、養由が芸を継ぎ、李広が跡を伝ふるほか、なにごとをかは学び習はんと思へども、それしも文を兼ね、歌を好むたぐひ、いとといみじくこそ。
 +
 +清原滋藤は、その身、征夷使軍監の武芸にいたりしかども、文のかた、たくみなりけり。ある時、詩の落句に作れり。
 +
 +  一文一武倶迷道
 +
 +  為我邯鄲歩漸窮
 +
 +この人は、忠文民部卿((藤原忠文))、将軍の宣旨を蒙りて、将門追討のために、あづまへ下りける時、ともなへりけり。
 +
 +駿河国清見関につきて、海のはたに宿りたりけるに、
 +
 +  漁舟火影寒焼波
 +
 +  駅路鈴声夜過山
 +
 +といふ古き詩を詠じたりければ、をりふし心澄みて、将軍涙落しにけり。
 +
 +この詩は、杜筍鶴が((底本「杜筍鶴と」。諸本により訂正。))臨江駅に宿りて作りけり。旅宿の夜の思ひ、同じ心や通ひけんと、げに心すごし。
 +
 +===== 翻刻 =====
 +
 +        シテ、往生ノ素懐ヲトケ給ケルモ、其理不違コソ、又モ
 +        トヨリタケキ人ノ家ニ生レヌル養由カ芸ヲツキ李広
 +        カ跡ヲツタフル外、何事ヲカハマナヒナラハント思トモ、ソ/k91
 +
 +        レシモ文ヲ兼哥ヲコノムタクヒ、イトトイミシクコソ、
 +  五十八清原滋藤ハ其身征夷使軍監ノ武芸ニイタリシカ
 +        トモ、文ノ方タクミナリケリ、アル時詩ノ落句ニ作レリ、
 +          一文一武倶迷道、為我邯鄲歩漸窮
 +        此人ハ忠文民部卿、将軍ノ宣旨ヲ蒙テ、将門追討
 +        ノタメニ、アツマヘ下ケル時トモナヘリケリ、駿河国浄見
 +        関ニ付テ、海ノハタニ宿タリケルニ、
 +          漁舟火影寒焼波、駅路鈴声夜過山
 +        ト云古キ詩ヲ詠シタリケレハ、オリフシ心スミテ将軍涙
 +        落ニケリ、此詩ハ杜筍鶴ト臨江駅ニ宿テ作リケ/k92
 +
 +        リ、旅宿ノ夜ノ思同心ヤカヨヒケント、ケニ心スコシ、/k93
  
text/jikkinsho/s_jikkinsho10-54.txt · 最終更新: 2016/04/05 17:19 by Satoshi Nakagawa