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text:jikkinsho:s_jikkinsho10-19

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text:jikkinsho:s_jikkinsho10-19 [2016/03/14 15:08] (現在)
Satoshi Nakagawa 作成
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 +十訓抄 第十 才芸を庶幾すべき事
 +====== 10の19 村上帝月明き夜清涼殿の上の御座にて・・・ ======
 +
 +===== 校訂本文 =====
 +
 +村上帝((村上天皇))、月明き夜、清涼殿の上の御座にて、水牛の角の撥(ばち)にて玄象(げんじやう)を弾きすまして、ただ一所おはしましけるに、影のごとくなるもの、空より飛び参りて、孫廂(まごびさし)に居たりければ、「何者ぞ」と問はせ給ふに、「大唐の琵琶の博士、字(あざな)劉二郎、廉承武に侍る。ただ今、この空を過ぎ侍りつるが、御琵琶の撥音のいみじさに参るところなり。おそらくは、貞敏((藤原貞敏))に授け残しし曲の侍るを、授け奉らん」と申す。
 +
 +聖主、叡感の気おはしまして、この琵琶をさしつかはし給ひたれば、かき鳴らして、「これは廉承武が琵琶に侍り。貞敏に伝ひ候ひし、秘事の内に侍り」と申しけり。よもすがら御話談ありて、上玄・石上の曲を授け奉りけり。
 +
 +そもそも西宮左大臣((源高明))、月の夜、琵琶を弾き給ひけるに、廉承武が霊来て、小女に憑きて、秘曲を授くる由、申し伝へたり。かの霊、再び来れるか。おぼつかなし。
 +
 +定頼中納言((藤原定頼))、法花経を読みすまして、一人居たる所に、陽勝仙人の来れることに似たり。
 +
 +===== 翻刻 =====
 +
 +  十八邑上帝月アカキ夜清涼殿ノ上ノ御座ニテ、水牛ノ角ノ
 +      撥ニテ玄象ヲ引スマシテ、只一所オハシマシケルニ、影ノ如
 +      クナルモノ、空ヨリトヒ参テ孫廂ニヰタリケレハ、ナニモノ
 +      ソト問セ給ニ、大唐ノ琵琶ノ博士アサナ劉二郎廉
 +      承武ニ侍、只今此空ヲスキ侍ツルカ、御比巴ノ撥音ノイ
 +      ミシサニ参ル所也、恐クハ貞敏ニサツケノコシシ曲ノ侍ヲ
 +      授奉ラント申、聖主叡感ノ気オハシマシテ、此比巴ヲ指
 +      遣ハシタマヒタレハ、カキナラシテ、是ハ廉承武カ比巴ニ侍、
 +      貞敏ニツタヒ候シ秘事ノ内ニ侍ト申ケリ、終夜御/k56
 +
 +      話談アリテ、上玄石上ノ曲ヲ授ケ奉リケリ、抑西宮
 +      左大臣月ノ夜比巴ヲ引給ケルニ、廉承武カ霊来テ、
 +      小女ニ付テ秘曲ヲ授ル由申伝ヘタリ、彼灵フタタヒ来
 +      レルカオホツカナシ、定頼中納言法花経ヲヨミスマシテ
 +      独居タル所ニ、陽勝仙人ノ来レル事ニ似タリ、/k57
  


text/jikkinsho/s_jikkinsho10-19.txt · 最終更新: 2016/03/14 15:08 by Satoshi Nakagawa