text:jikkinsho:s_jikkinsho10-12
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text:jikkinsho:s_jikkinsho10-12 [2016/03/09 23:14] – 作成 Satoshi Nakagawa | text:jikkinsho:s_jikkinsho10-12 [2016/03/09 23:18] (現在) – Satoshi Nakagawa | ||
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ち)よかりける女(むすめ)をなん持ちたりけるが、十七八なりければ、「これをいかにして、目安きさまにせん」と思ふかなしさに、八幡に姫君とともに泣く泣く参りて、よもすがら、御前にて、「身は今はいかにても候ひなん。この女を心安きさまにて見せ給へ」と数珠(ずず)をすりて、うち嘆ききうち嘆き申しけるに、この娘、参り着くより、母の膝を枕にして、起きも上がらず、寝たりければ、暁方になりて、母申すやう、「いかばかり思ひて、かなはぬ心に、徒歩(かち)より参りつるに、わが申すやうに、よもすがら、神も『あはれ』と思しめすばかり申し給ふべきに、思ふことなげに寝給へるうたてさよ」とくどかれて、姫君おどろきて、「かなはぬ道に苦しくて」と言ひて、 | ち)よかりける女(むすめ)をなん持ちたりけるが、十七八なりければ、「これをいかにして、目安きさまにせん」と思ふかなしさに、八幡に姫君とともに泣く泣く参りて、よもすがら、御前にて、「身は今はいかにても候ひなん。この女を心安きさまにて見せ給へ」と数珠(ずず)をすりて、うち嘆ききうち嘆き申しけるに、この娘、参り着くより、母の膝を枕にして、起きも上がらず、寝たりければ、暁方になりて、母申すやう、「いかばかり思ひて、かなはぬ心に、徒歩(かち)より参りつるに、わが申すやうに、よもすがら、神も『あはれ』と思しめすばかり申し給ふべきに、思ふことなげに寝給へるうたてさよ」とくどかれて、姫君おどろきて、「かなはぬ道に苦しくて」と言ひて、 | ||
- | 身の憂さをなかに何といはしみづ思ふ心を汲みて知るらむ | + | 身の憂さをなかなか何といはしみづ思ふ心を汲みて知るらむ |
と詠みたりければ、母も恥づかしくて、ものも言はずして下向するに、七条朱雀のほとりにて、世の中にときめき給ふ殿上人、桂より遊びて帰り給ふが、この女を取りて、車に乗せて、やがて北の方にして、始終いみじかりけり。 | と詠みたりければ、母も恥づかしくて、ものも言はずして下向するに、七条朱雀のほとりにて、世の中にときめき給ふ殿上人、桂より遊びて帰り給ふが、この女を取りて、車に乗せて、やがて北の方にして、始終いみじかりけり。 | ||
行 25: | 行 25: | ||
ニネ給ヘルウタテサヨトクトカレテ、姫君オトロキテ、カナ | ニネ給ヘルウタテサヨトクトカレテ、姫君オトロキテ、カナ | ||
ハヌミチニクルシクテト云テ、 | ハヌミチニクルシクテト云テ、 | ||
- | 身ノウサヲ中ニ何トイハシミツ、思フ心ヲクミテシルラム/k48 | + | 身ノウサヲ中々何トイハシミツ、思フ心ヲクミテシルラム/k48 |
トヨミタリケレハ、母モハツカシクテ、物モイハスシテ下向 | トヨミタリケレハ、母モハツカシクテ、物モイハスシテ下向 |
text/jikkinsho/s_jikkinsho10-12.txt · 最終更新: 2016/03/09 23:18 by Satoshi Nakagawa