text:jikkinsho:s_jikkinsho07-22
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text:jikkinsho:s_jikkinsho07-22 [2016/02/11 15:27] – [翻刻] Satoshi Nakagawa | text:jikkinsho:s_jikkinsho07-22 [2019/11/10 21:14] (現在) – [校訂本文] Satoshi Nakagawa | ||
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夜に入りて、門を叩く者あり、「使庁の使ひなり」と言ふ。「その尼、多く盗犯の沙汰にかかりたるなり。許し出だすな」と言ひて帰りぬ。 | 夜に入りて、門を叩く者あり、「使庁の使ひなり」と言ふ。「その尼、多く盗犯の沙汰にかかりたるなり。許し出だすな」と言ひて帰りぬ。 | ||
- | これによりて、かの尼を縛りてあひ待つ((底本「待つ」なし。諸本により補入。))ほどに、夜更けて、判官殿といふ者来て、また門を叩く。「この尼を請ひ取むとするか」とて、入れて、隆禅みづから対面してけり。 | + | これによりて、かの尼を縛りてあひ待つ((底本「待つ」なし。諸本により補入。))ほどに、夜更けて、判官殿といふ者来て、また門を叩く。「この尼を請ひ取らむとするか」とて、入れて、隆禅みづから対面してけり。 |
- | ここに判官と名乗るもの、隆禅を捕らへて、刀を抜きて、脇にさし当てて、「なんぢ、もし動 | + | ここに判官と名乗るもの、隆禅を捕らへて、刀を抜きて、脇にさし当てて、「なんぢ、もし動きはたらかば、殺てん。坊中の人、声を出だすな」と言ひて、そのほどに、塗籠・倉などひき開けて、資財・雑物、若干運び取りて、馬十余疋に負はせて、尼公をも、隆禅をも、馬に乗せて、粟田山へゐて行きて、解き許す。さて、おのおの去りにけり。 |
- | きはたらかば、殺てん。坊中の人、声を出だすな」と言ひて、そのほどに、塗籠・倉などひき開けて、資財・雑物、若干運び取りて、馬十余疋に負はせて、尼公をも、隆禅をも、馬に乗せて、粟田山へゐて行きて、解き許す。さて、おのおの去りにけり。 | + | |
かの秦の始皇帝、高漸離に謀られて、剣にのぞめりけるは、燕の国の図にふけりて、みづから出であひ給へるゆゑなり。隆禅、無縁の尼をあはれぶ。慈悲の心を元として、かかる目にあひけるこそ、あさましけれ。 | かの秦の始皇帝、高漸離に謀られて、剣にのぞめりけるは、燕の国の図にふけりて、みづから出であひ給へるゆゑなり。隆禅、無縁の尼をあはれぶ。慈悲の心を元として、かかる目にあひけるこそ、あさましけれ。 | ||
- | これらのことまでも、よくく心すべきなり。 | + | これらのことまでも、よく心すべきなり。 |
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text/jikkinsho/s_jikkinsho07-22.txt · 最終更新: 2019/11/10 21:14 by Satoshi Nakagawa