text:jikkinsho:s_jikkinsho06-18
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text:jikkinsho:s_jikkinsho06-18 [2016/01/09 22:27] – [校訂本文] Satoshi Nakagawa | text:jikkinsho:s_jikkinsho06-18 [2020/04/16 23:48] (現在) – [校訂本文] Satoshi Nakagawa | ||
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わが朝のこと、常に人の口にあるほか、一両条申すべし。 | わが朝のこと、常に人の口にあるほか、一両条申すべし。 | ||
- | 昔、元正天皇の御時、美濃国に貧しく賤しき男ありけるが、老いたる父を持ちたり。この男、山の木草を取りて、その値を得て、父を養ひけり。 | + | 昔、元正天皇の御時、美濃国に貧しく賤しき男ありけるが、老いたる父を持ちたり。この男、山の木草を取りて、その値を得て、父を養ひけり。この父、朝夕あながちに酒を愛し欲しがる。これによりて、男、なりひさごといふ物を腰に付けて、酒を沽(う)る家に行きて、常にこれを乞ひて、父を養ふ。 |
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- | この父、朝夕あながちに酒を愛し欲しがる。これによりて、男、なりひさごといふ物を腰に付けて、酒を沽(う)る家に行きて、常にこれを乞ひて、父を養ふ。 | + | |
ある時、山に入りて、薪を取らんとするに、苔深き石にすべりて、うつぶしにまろびたりけるに、酒の香しければ、思はずにあやしくて、そのあたりを見るに、石の中より水流れ出づることあり。その色、酒に似たり。汲みて舐むるに、めでたき酒なり。うれしく思えて、そののち、日々にこれを汲みて、あくまで父を養ふ。 | ある時、山に入りて、薪を取らんとするに、苔深き石にすべりて、うつぶしにまろびたりけるに、酒の香しければ、思はずにあやしくて、そのあたりを見るに、石の中より水流れ出づることあり。その色、酒に似たり。汲みて舐むるに、めでたき酒なり。うれしく思えて、そののち、日々にこれを汲みて、あくまで父を養ふ。 |
text/jikkinsho/s_jikkinsho06-18.txt · 最終更新: 2020/04/16 23:48 by Satoshi Nakagawa