text:jikkinsho:s_jikkinsho03-01
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— | text:jikkinsho:s_jikkinsho03-01 [2015/10/11 16:59] (現在) – 作成 Satoshi Nakagawa | ||
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+ | 十訓抄 第三 人倫を侮らざる事 | ||
+ | ====== 3の1 和泉式部保昌が妻にて丹後に下りけるほどに・・・ ====== | ||
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+ | ===== 校訂本文 ===== | ||
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+ | 和泉式部、保昌((藤原保昌))が妻(め)にて、丹後に下りけるほどに、京に歌合ありけるに、小式部内侍、歌詠みにとられて詠みけるを、定頼中納言((藤原定頼))、戯れて、小式部内侍ありけるに、「丹後へつかはしける人は参りたりや。いかに心もとなく思すらむ」と言ひて、局の前を過ぎられけるを、御簾よりなからばかり出でて、わづかに直衣の袖をひかへて、 | ||
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+ | 大江山いくのの道の遠ければまだふみも見ず天の橋立 | ||
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+ | と詠みかけけり。 | ||
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+ | 思はずに、あさましくて、「こはいかに。かかるやうやはある」とばかり言ひて、返歌にも及ばず、袖を引き放ちて、逃げられけり。 | ||
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+ | 小式部、これより歌詠みの世におぼえ出できにけり。 | ||
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+ | これは、うちまかせての理運のことなれども、かの卿の心には、「これほどの歌、ただ今詠み出だすべし」とは、知られざりけるにや。 | ||
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+ | ===== 翻刻 ===== | ||
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+ | 和泉式部保昌カ妻ニテ丹後ニ下ケル程ニ、京ニ哥 | ||
+ | 合アリケルニ、小式部内侍哥読ニトラレテヨミケルヲ、 | ||
+ | 定頼中納言戯レテ小式部内侍アリケルニ、丹後ヘ | ||
+ | 遣シケル人ハ参リタリヤ、イカニ心モトナクオホスラムト | ||
+ | 云テ、局ノ前ヲ過ラレケルヲ、御スヨリ半ラハカリ出 | ||
+ | テ、ワツカニ直衣ノ袖ヲヒカヘテ、 | ||
+ | 大江山イクノノ道ノ遠ケレハ、マタフミモミスアマノハシ立 | ||
+ | トヨミカケケリ、思ハスニ浅マシクテ、コハイカニカカルヤウヤ | ||
+ | ハアルトハカリ云テ、返哥ニモ及ハス、袖ヲヒキハナチテ/k113 | ||
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+ | 逃ラレケリ、小式部是ヨリ哥ヨミノ世ニオホエ出キニ | ||
+ | ケリ、是ハウチ任テノ理運ノ事ナレトモ、彼卿ノ心ニハ | ||
+ | 是程ノ哥只今ヨミ出スヘシトハシラレサリケルニヤ、/k114 | ||
text/jikkinsho/s_jikkinsho03-01.txt · 最終更新: 2015/10/11 16:59 by Satoshi Nakagawa