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text:jikkinsho:s_jikkinsho01-45

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text:jikkinsho:s_jikkinsho01-45 [2015/09/28 23:33] – 作成 Satoshi Nakagawatext:jikkinsho:s_jikkinsho01-45 [2015/09/28 23:34] (現在) – [校訂本文] Satoshi Nakagawa
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 と詠みたりけれども、いとど限りにのみ見えければ、父の沙汰にて、ある山寺より知識の僧を呼びたりけるが、中有の旅の有様、心細きやうなど言ひて、「これにやすらはで、ただちに浄土へ参り給へ」など言ひ聞かせけり。 と詠みたりけれども、いとど限りにのみ見えければ、父の沙汰にて、ある山寺より知識の僧を呼びたりけるが、中有の旅の有様、心細きやうなど言ひて、「これにやすらはで、ただちに浄土へ参り給へ」など言ひ聞かせけり。
  
-「中有とはいかなる所ぞ」と病人問ひければ、「夕暮の空に広き野に行き出でたるやうにて、知れる人もなくて、ただ独り心細くまかり歩くなり。倶舎には『欲往前路無資糧。求住中間無所止』と申したると答ふるを聞きて、「その野には、嵐にたぐふ紅葉、風になびく尾花がもとに、松虫・鈴虫鳴くにや。さだにもあらば、何かは苦しからん」と言ふ。これを聞きて、あいなく、心づきなく思えければ、僧、逃げ走り、逃げにけり。+「中有とはいかなる所ぞ」と病人問ひければ、「夕暮の空に広き野に行き出でたるやうにて、知れる人もなくて、ただ独り心細くまかり歩くなり。倶舎には『欲往前路無資糧。求住中間無所止』と申したると答ふるを聞きて、「その野には、嵐にたぐふ紅葉、風になびく尾花がもとに、松虫・鈴虫鳴くにや。さだにもあらば、何かは苦しからん」と言ふ。これを聞きて、あいなく、心づきなく思えければ、僧、逃げ走り、逃げにけり。
  
 この歌のはての「ふ((底本「そ」。諸本により訂正。))」文字をば、え書かざりけるを、さながら都へ持て帰り、親どもいかにあはれに悲しかりけむ。 この歌のはての「ふ((底本「そ」。諸本により訂正。))」文字をば、え書かざりけるを、さながら都へ持て帰り、親どもいかにあはれに悲しかりけむ。
text/jikkinsho/s_jikkinsho01-45.1443450823.txt.gz · 最終更新: 2015/09/28 23:33 by Satoshi Nakagawa