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text:jikkinsho:s_jikkinsho01-39
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text:jikkinsho:s_jikkinsho01-39 [2015/09/24 14:32] (現在) – 作成 Satoshi Nakagawa
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 +十訓抄 第一 人に恵を施すべき事
 +====== 1の39 楊梅大納言顕雅卿は若くよりいみじく言失をぞし給ひける・・・ ======
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 +===== 校訂本文 =====
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 +楊梅大納言顕雅卿((源顕雅))は、若くより、いみじく言失をぞし給ひける。
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 +神無月のころ、ある宮腹に参りて、御簾の外(と)にて女房達と物語せられけるに、時雨のさとしければ、供なる雑色を呼びて、「車の降るに、時雨さし入よ」とのたまひけるを、「車軸とかやにや、恐しや」とて、御簾の内、笑ひあはれけり。
 +
 +さて、ある女房の、「御言ひ違へ、常にありと聞こゆれば、まことにや、御祈りの有るぞや」と言はれければ、「そのために、三尺の鼠を造り、供養せむと思ひ侍る」と言はれたりける。
 +
 +折節、鼠の御簾のきはを走り通りけるを見て、観音に思ひまがへてのたまひけるなり。
 +
 +「時雨さし入よ」には、勝(まさ)りてをかしかりけり。落度のついでに言ひ出ださる。
 +
 +===== 翻刻 =====
 +
 +  楊梅大納言顕雅卿ハ若クヨリイミシク言失ヲソシタ
 +  マイケル、神無月ノ頃或宮原ニ参テ、御スノトニテ女
 +  房達トモノガタリセラレケルニ、時雨ノサトシケレハ、共ナル
 +  雑色ヲヨヒテ、車ノフルニ時雨サシ入ヨトノ給ケルヲ、
 +  車軸トカヤニヤオソロシヤトテ、御スノ内咲ヒアハレケ
 +  リ、サテ或女房ノ御イヒタカヘ常ニ有ト聞ユレハ、実/k74
 +
 +  ニヤ御祈ノ有ソヤト云レケレハ、其タメニ三尺ノネスミ
 +  ヲツクリ供養セムト思侍ルト云レタリケル折節ネス
 +  ミノ御スノキハヲ走リトヲリケルヲ見テ観音ニ思マ
 +  カヘテノ給ケル也、時雨サシ入ヨニハマサリテオカシカリ
 +  ケリ、越度ノ次ニ云出サル、/k75
  
text/jikkinsho/s_jikkinsho01-39.txt · 最終更新: 2015/09/24 14:32 by Satoshi Nakagawa