text:jikkinsho:s_jikkinsho01-18
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text:jikkinsho:s_jikkinsho01-18 [2015/09/04 23:57] – 作成 Satoshi Nakagawa | text:jikkinsho:s_jikkinsho01-18 [2015/09/05 01:18] (現在) – Satoshi Nakagawa | ||
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ある夜、物語して、暁帰りけるほどに、この人の共なりける蔵人といふものに、「いまだ入りもやらで、見送りたるが、ふり捨てがたきに、立ち帰りて、何ごとにても言ひて来(こ)」とのたまひければ、「ゆゆしき大事かな」と思へど、ほど経(ふ)べきことならねば、やがて走り入りて、車寄(くるまよせ)に女の立ちたる前についゐて、「『申せ』と候ふ」とは左右(さう)なく言ひ出でたれど、何とも言ふべしとも思えぬに、折しも、里の鶏、声々鳴き出でたりければ、 | ある夜、物語して、暁帰りけるほどに、この人の共なりける蔵人といふものに、「いまだ入りもやらで、見送りたるが、ふり捨てがたきに、立ち帰りて、何ごとにても言ひて来(こ)」とのたまひければ、「ゆゆしき大事かな」と思へど、ほど経(ふ)べきことならねば、やがて走り入りて、車寄(くるまよせ)に女の立ちたる前についゐて、「『申せ』と候ふ」とは左右(さう)なく言ひ出でたれど、何とも言ふべしとも思えぬに、折しも、里の鶏、声々鳴き出でたりければ、 | ||
- | | + | 物かはと君が言ひけむ鳥の音(ね)の今朝しもなどか悲しかるらん |
とばかり言ひかけて、やがて走り着きて、「車寄にて、かくこそ申して候ひつれ」と申しければ、いみじくめでられけり。 | とばかり言ひかけて、やがて走り着きて、「車寄にて、かくこそ申して候ひつれ」と申しければ、いみじくめでられけり。 | ||
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===== 翻刻 ===== | ===== 翻刻 ===== | ||
- | 後徳大寺左大臣小侍従と聞えし哥よみに通ひ給け | + | 後徳大寺左大臣小侍従ト聞エシ哥ヨミニ通ヒ給ケ |
- | | + | |
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- | 事ならねは、やかて走り入て、車寄に女の立たる | + | 事ナラネハ、ヤカテ走リ入テ、車寄ニ女ノ立タル |
- | 前についゐて、申せと候とは左右なく云出てたれと、/k41 | + | 前ニツイヰテ、申セト候トハ左右ナク云出テタレト、/k41 |
- | 何とも云へしとも覚えぬに、折しも里の鶏声々鳴 | + | 何トモ云ヘシトモ覚エヌニ、折シモ里ノ鶏声々鳴 |
- | 出てたりけれは、 | + | 出テタリケレハ、 |
- | 物かはと君かいひけむ鳥の音の、今朝しもなとか悲しかるらん | + | 物カハト君カイヒケム鳥ノ音ノ、今朝シモナトカ悲シカルラン |
- | | + | |
- | 申て候つれと申けれは、いみしくめてられけり、さてこそ | + | 申テ候ツレト申ケレハ、イミシクメテラレケリ、サテコソ |
- | 使にははからひつれとて、後にしる所なとたひたりけるとな | + | 使ニハハカラヒツレトテ、後ニシル所ナトタヒタリケルトナ |
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- | 伊勢大輔か墨する程に今日九重にと云ふ哥を案し | + | 伊勢大輔カ墨スル程ニ今日九重ニト云フ哥ヲ案シ |
- | 得、ひと間を居さり出る間に、こはえもいはぬ花の色かなの | + | 得、ヒト間ヲ居サリ出ル間ニ、コハエモイハヌ花ノ色カナノ |
- | 末の句をつけたりける、心のはやさにもおとらすこそ聞/k42 | + | 末ノ句ヲツケタリケル、心ノハヤサニモオトラスコソ聞/k42 |
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text/jikkinsho/s_jikkinsho01-18.txt · 最終更新: 2015/09/05 01:18 by Satoshi Nakagawa