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今物語

第38話 ある人の夢にその正体もなきもの影のやうなるが見えけるを・・・

校訂本文

ある人の夢に、その正体もなきもの、影のやうなるが見えけるを、「あれは何人ぞ」と尋ねければ、「紫式部なり。そらごとをのみ多くし集めて、人の心を惑はすゆゑに、地獄に落ちて、苦を受くること、いと堪へがたし。源氏の物語の名を具して、南無阿弥陀仏(なもあみたぶつ)といふ歌を、巻ごとに人々に詠ませて、我が苦しみをとぶらひ給へ」と言ひければ、「いかやうに詠むべきにか」と尋ねけるに、

  きりつぼに迷はん闇も晴るばかり南無阿弥陀仏と常に言はなん

とぞ言ひける。

翻刻

ある人の夢にその正体もなきものかけのやうなるかみえける
をあれはなに人そとたつねけれは紫式部なりそらことを
のみおほくしあつめて人の心をまとはすゆへに地獄に
おちて苦をうくる事いとたえかたし源氏の物語の名を具し
てなもあみた仏といふ哥を巻ことに人々によませてわか/s24l
くるしみをとふらひたまへといひけれはいかやうによむへき
にかと尋けるに
  きりつほにまよはんやみもはるはかりなもあみた仏とつねにいはなん
とそいひける/s25r
text/ima/s_ima038.txt · 最終更新: 2014/12/27 16:01 by Satoshi Nakagawa
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