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text:ima:s_ima027

今物語

第27話 小大進と聞こえし歌詠みいと貧しくて太秦へ参りて・・・

校訂本文

小大進と聞こえし歌詠み、いと貧しくて、太秦(うづまさ)へ参りて、御前の柱に書き付けける歌

  南無薬師(なもやくし)あはれみ給へ世の中にありわづらふも同じ病を

と、詠みたりければ、ほどなく八幡(やはた)の別当光清にあひ具して、楽しくなりにけり。

子など出で来て後、もろともに居たりける所近き所に、芋の蔓(つる)の這ひかかりて、ぬかごなどの生(な)りたりけるを見て、光清、

  這ふほどにいもがぬかごはなりにけり

と言ひたりければ、ほどなく小大進、

  今はもりもや取るべかるらん

と付けたりける、おもしろかりけり。

翻刻

小大進ときこえし哥よみいとまつしくてうつまさへ
まいりて御まへのはしらにかきつけける哥
  なもやくしあはれみたまへ世中にありわつらふも同し病を
とよみたりけれはほとなくやはたの別当光清にあひ
くしてたのしくなりにけり子なといてきて後もろともに
ゐたりける所ちかきところにいものつるのはひかかりて
ぬかこなとのなりたりけるをみて光清
  はふほとにいもかぬかこは成にけり
といひたりけれはほとなく小大進
  いまはもりもやとるへかるらん
とつけたりけるおもしろかりけり/s19l
text/ima/s_ima027.txt · 最終更新: 2016/09/18 14:44 by Satoshi Nakagawa