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今物語

第9話 ある蔵人五位の月くまなかりける夜革堂へ参りけるに・・・

校訂本文

ある蔵人五位の、月くまなかりける夜、革堂(かはだう)へ参りけるに、いと美しげなる女房の、一人参り会ひたりける。見捨てがたう思えけるままに、言ひ寄りて語らひければ、「大方(おほかた)さやうの道にはかなひがたき身にて」なんど、やうやうに言ひしろひけるを、なほ堪へがたく思えて、帰りけるに付きて行きければ、一条河原になりにけり。

女房、見返りて、

  玉みくりうきにしもなど根をとめて引き上げ所なき身なるらん

と、ひとりごちて、清める家のありけるに入りにけり。

男、それしも、「いとあはれに不思議」と思えけり。

翻刻

ある蔵人五位の月くまなかりけるよかはたうへまいり
けるにいとうつくしけなる女房のひとりまいりあひ
たりける見すてかたうおほえけるままにいひよりて
かたらひけれはおほかたさやうのみちにはかなひかたき身
にてなんとやうやうにいひしろひけるを猶たえかたく
おほえて帰けるにつきて行けれは一条河原に
なりにけり女房見かへりて
  玉みくりうきにしもなとねをとめてひきあけ所なき身なるらん
とひとりこちてきよめる家のありけるに入にけり
おとこそれしもいとあはれにふしきとおほえけり/s9r
text/ima/s_ima009.txt · 最終更新: 2014/12/16 15:39 by Satoshi Nakagawa
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