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--- text:hosshinju:h_hosshinju5-09 [2017/06/13 19:30] – 作成 Satoshi Nakagawa
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     成信重家同時出家事
-  兵部卿致平親王の御子成信中将と堀川右大臣
+  兵部卿致平親王ノ御子成信中将ト堀川右大臣
-  の子にて重家の少将ときこえける人時にとり世にと／n19r
+  ノ子ニテ重家ノ少将トキコエケル人時ニトリ世ニト／n19r
-  りて。類なき若人なりければ。てる中将。ひかる少将。とて
+  リテ。類ナキ若人ナリケレバ。テル中将。ヒカル少将。トテ
-  同しさまにそいはれ給ひける。此二人をなじ時に心を発
+  同シサマニソイハレ給ヒケル。此二人ヲナジ時ニ心ヲ発
-  して世を背かん事をいひ合せ給ふ。心さしは一なれと
+  シテ世ヲ背カン事ヲイヒ合セ給フ。心サシハ一ナレト
-  発心のをこりは異なりけり。少将は時の一の人のおもく
+  発心ノヲコリハ異ナリケリ。少将ハ時ノ一ノ人ノオモク
-  わづらひ給ひけるに。そのかげにかくれたる人の憂ある
+  ワヅラヒ給ヒケルニ。ソノカゲニカクレタル人ノ憂アル
-  さまをうけとり給ふべき方の御ゆかりの人のけしき
+  サマヲウケトリ給フベキ方ノ御ユカリノ人ノケシキ
-  などを見給ひけるに。をしむもそねむも心うき習なり
+  ナドヲ見給ヒケルニ。ヲシムモソネムモ心ウキ習ナリ
-  とおぼしけるより。をのづからいとふ事となりにけり。
+  トオボシケルヨリ。ヲノヅカライトフ事トナリニケリ。
-  中将は斉信。公任。俊賢。行成など聞へていみじかり
+  中将ハ斉信。公任。俊賢。行成ナド聞ヘテイミジカリ
-  ける人々陣の座にて朝のさだめども折々才覚をはき／n19l
+  ケル人々陣ノ座ニテ朝ノサダメドモ折々才覚ヲハキ／n19l
-  て。いみじかりけるをたちききて。司位は高く昇らんと
+  テ。イミジカリケルヲタチキキテ。司位ハ高ク昇ラント
-  思はば。身の恥を知ぬにこそありけれ。此人々にはいかにも
+  思ハバ。身ノ恥ヲ知ヌニコソアリケレ。此人々ニハイカニモ
-  及ふべくもあらず。さて世に有ては何にかはせん彼世を
+  及フベクモアラズ。サテ世ニ有テハ何ニカハセン彼世ヲ
-  願ふべかりけりと思とり給ける也此二人その日と
+  願フベカリケリト思トリ給ケル也此二人ソノ日ト
-  定めて三井寺の慶祚阿闍梨のもとへ行あはんと契
+  定メテ三井寺ノ慶祚阿闍梨ノモトヘ行アハント契
-  給へり。重家の君おそく見へければ。夜に入るまで待か
+  給ヘリ。重家ノ君オソク見ヘケレバ。夜ニ入ルマデ待カ
-  ねて。をのづから思わづらふ事のあるなめりと本意な
+  ネテ。ヲノヅカラ思ワヅラフ事ノアルナメリト本意ナ
-  くおぼしながら。独阿闍梨の室にいたりて。かしらを
+  クオボシナガラ。独阿闍梨ノ室ニイタリテ。カシラヲ
-  ろさんと聞ゆ阿闍梨あたらしき御様なるのみに非す
+  ロサント聞ユ阿闍梨アタラシキ御様ナルノミニ非ス
-  名高くをはするのみなれば。びんなく侍りなむとて。いなひ／n20r
+  名高クヲハスルノミナレバ。ビンナク侍リナムトテ。イナヒ／n20r
-  申ければ白地に立出る様にてみづから髪をきりてか
+  申ケレバ白地ニ立出ル様ニテミヅカラ髪ヲキリテカ
-  くなむ罷成たるとありける時ぞ云甲斐なくて許き
+  クナム罷成タルトアリケル時ゾ云甲斐ナクテ許キ
-  こへける。かくて暁帰らんとし給ひける時。露にそほぬれ
+  コヘケル。カクテ暁帰ラントシ給ヒケル時。露ニソホヌレ
-  つつ重家少将をはしたり。いかに遅は夜ふくるまで待た
+  ツツ重家少将ヲハシタリ。イカニ遅ハ夜フクルマデ待タ
-  てまつりしかと。若ためらひ給ふ事などの侍かとて。
+  テマツリシカト。若タメラヒ給フ事ナドノ侍カトテ。
-  さきになん仕りたると有ければ。さやうに契り聞へてい
+  サキニナン仕リタルト有ケレバ。サヤウニ契リ聞ヘテイ
-  かでかは日をばたがへ侍らん。をとどに暇乞奉らでは罪
+  カデカハ日ヲバタガヘ侍ラン。ヲトドニ暇乞奉ラデハ罪
-  ゑぬべく思給て。つゐでをはからひ侍しかば。日をたがへし
+  ヱヌベク思給テ。ツヰデヲハカラヒ侍シカバ。日ヲタガヘシ
-  とて夜部もとゆひをは切侍りとてなむ見せ給ひける
+  トテ夜部モトユヒヲハ切侍リトテナム見セ給ヒケル
-  中将は廿三。少将は廿五とぞ。さしもすぐれ。さるべき人だに／n20l
+  中将ハ廿三。少将ハ廿五トゾ。サシモスグレ。サルベキ人ダニ／n20l
-  も。あたらしかるべきを。かく同し心にて形をやつし給ひつ
+  モ。アタラシカルベキヲ。カク同シ心ニテ形ヲヤツシ給ヒツ
-  れば阿闍梨なみだを落しつつ且はおしみ且は哀みけり。此
+  レバ阿闍梨ナミダヲ落シツツ且ハオシミ且ハ哀ミケリ。此
-  少将先もとゆひをきりて。やはらかぶりをして。くらきま
+  少将先モトユヒヲキリテ。ヤハラカブリヲシテ。クラキマ
-  ぎれに父の大臣に暇を乞給ひければ。をのづから其気色
+  ギレニ父ノ大臣ニ暇ヲ乞給ヒケレバ。ヲノヅカラ其気色
-  やあらはれたりけん。いかに云ともとまるべき様にも見へ
+  ヤアラハレタリケン。イカニ云トモトマルベキ様ニモ見ヘ
-  ざりしかば。ゑとどめずなりにきとその給ひける。又多武
+  ザリシカバ。ヱトドメズナリニキトソノ給ヒケル。又多武
-  峯の入道高光少将は兄の一条の摂政の事にふれつつあ
+  峯ノ入道高光少将ハ兄ノ一条ノ摂政ノ事ニフレツツア
-  やまり多くおはしけるを見給ひて。世にあるは恥がましき
+  ヤマリ多クオハシケルヲ見給ヒテ。世ニアルハ恥ガマシキ
-  事にこそとて自是心を発し給ひけるとなむ。人のかし
+  事ニコソトテ自是心ヲ発シ給ヒケルトナム。人ノカシ
-  こきにつけても。愚なるにつけても実の道をねがふたより／n21r
+  コキニツケテモ。愚ナルニツケテモ実ノ道ヲネガフタヨリ／n21r
-  と成にけんこそ。げにあらまほしく侍れ／n21l
+  ト成ニケンコソ。ゲニアラマホシク侍レ／n21l