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text:hosshinju:h_hosshinju5-02

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text:hosshinju:h_hosshinju5-02 [2017/05/30 20:56]
Satoshi Nakagawa [校訂本文]
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 この男の心、いかばかりなりけむ。男とは、なにがしの弁とかや聞きしかど、名は忘れにけ この男の心、いかばかりなりけむ。男とは、なにがしの弁とかや聞きしかど、名は忘れにけ
-り((標題では伊家(藤原伊家)。なお、[[:​k_konjaku:​k_konjaku31-7|『今昔物語集』31-7]]では、藤原師家となっている。))。+り((標題では伊家(藤原伊家)。なお、[[:text:​k_konjaku:​k_konjaku31-7|『今昔物語集』31-7]]では、藤原師家となっている。))。
  
-人を恋ひては、あるいは望夫石と名をとどめ(([[:​kara:​m_kara012|『唐物語』第12話]]参照))、もしはつらさの余りに、悪霊なんどになれるためしも聞こゆ。いかにも罪深き習ひのみこそ侍るに、それを往生の縁(えん)として、思ふやうに終りにけん、いとめでたかりける心なるべし。+人を恋ひては、あるいは望夫石と名をとどめ(([[:text:​kara:​m_kara012|『唐物語』第12話]]参照))、もしはつらさの余りに、悪霊なんどになれるためしも聞こゆ。いかにも罪深き習ひのみこそ侍るに、それを往生の縁(えん)として、思ふやうに終りにけん、いとめでたかりける心なるべし。
  
-あはれ、これをためしにて、この世にも物思ふ人の往生を願ふことにて侍らば、いかに心かしこからん。たとひ、同じ心なる中とても、幾世かはある。楊貴妃はむなしく比翼の契りを残し(([[:​kara:​m_kara018|『唐物語』第18話]]参照))、李夫人はわづかに反魂の煙(けぶり)にのみあらはれたり(([[:​kara:​m_kara015|『唐物語』第15話]]参照))。いはんや、思はぬ人のためには、ことにふれつつ、あはれも知らんことわりもなし。思ひあまりぬる時。富士 +あはれ、これをためしにて、この世にも物思ふ人の往生を願ふことにて侍らば、いかに心かしこからん。たとひ、同じ心なる中とても、幾世かはある。楊貴妃はむなしく比翼の契りを残し(([[:text:​kara:​m_kara018|『唐物語』第18話]]参照))、李夫人はわづかに反魂の煙(けぶり)にのみあらはれたり(([[:text:​kara:​m_kara015|『唐物語』第15話]]参照))。いはんや、思はぬ人のためには、ことにふれつつ、あはれも知らんことわりもなし。思ひあまりぬる時。富士の嶺(ね)を引きかけ、海士の袖とかこちて、ねんごろに心の底をあらはせど、何のかひかはある。一人胸をこがし、袖をしぼるほどは、いみじくあぢきなくなむ侍り。いかにいはんや、この世一つにてやむべきことにてもあらず。その報ひむなしからねば、来世にはまた、人の心をつ尽さすべし。
-の嶺(ね)を引きかけ、海士の袖とかこちて、ねんごろに心の底をあらはせど、何のかひかはある。一人胸をこがし、袖をしぼるほどは、いみじくあぢきなくなむ侍り。いかにいはんや、この世一つにてやむべきことにてもあらず。その報ひむなしからねば、来世にはまた、人の心をつ尽さすべし。+
  
 かくのごとく、世々生々、互ひにきはまりなくして、生死のきづなとならんことの、いと罪深く侍るなり。このたび、思ひ切りて、極楽に生れなば、憂きもつらきも寝ぬる夜の夢に異らじ。立ち帰り、善知識と悟りて、かれを導かんことこそ、あらまほしく侍れ。もし、浄土にて、なほ尽きがたきほどの恨みならば、その時言ひ向へをもせよかし。 かくのごとく、世々生々、互ひにきはまりなくして、生死のきづなとならんことの、いと罪深く侍るなり。このたび、思ひ切りて、極楽に生れなば、憂きもつらきも寝ぬる夜の夢に異らじ。立ち帰り、善知識と悟りて、かれを導かんことこそ、あらまほしく侍れ。もし、浄土にて、なほ尽きがたきほどの恨みならば、その時言ひ向へをもせよかし。


text/hosshinju/h_hosshinju5-02.txt · 最終更新: 2017/05/30 20:57 by Satoshi Nakagawa