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--- text:hosshinju:h_hosshinju4-06 [2017/05/20 22:11] – 作成 Satoshi Nakagawa
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     玄賓係念亜相室事 不浄観事
-  昔玄賓僧都いみじうたうとき人なれば高きも賤も
+  昔玄賓僧都イミジウタウトキ人ナレバ高キモ賤モ
-  仏の如く思へりける中に。大納言なる人なん。年比ことに
+  仏ノ如ク思ヘリケル中ニ。大納言ナル人ナン。年比コトニ
-  相憑み給たりける。かかる間に僧都そこはかとなくなや
+  相憑ミ給タリケル。カカル間ニ僧都ソコハカトナクナヤ
-  みて。日比になりぬ。大納言覚束なさのあまりに。自ら渡
+  ミテ。日比ニナリヌ。大納言覚束ナサノアマリニ。自ラ渡
-  給て。さてもいかなる御心地にかなんと。こまやかにとふら／n12r
+  給テ。サテモイカナル御心地ニカナント。コマヤカニトフラ／n12r
-  ひ給を。近くより給へ申侍らんとあれば。あやしくてさしより
+  ヒ給ヲ。近クヨリ給ヘ申侍ラントアレバ。アヤシクテサシヨリ
-  給へるに。忍てきこゆ誠にはことなる病にも侍らず。一日殿の
+  給ヘルニ。忍テキコユ誠ニハコトナル病ニモ侍ラズ。一日殿ノ
-  御もとへまうでたりしに。北方の形いと目出て見へ給へり
+  御モトヘマウデタリシニ。北方ノ形イト目出テ見ヘ給ヘリ
-  しを。ほのかに見たてまつりて後物覚へず心まとひむねふ
+  シヲ。ホノカニ見タテマツリテ後物覚ヘズ心マトヒムネフ
-  たかりていかにも物の云れ侍らぬ也。此事申につけて憚
+  タカリテイカニモ物ノ云レ侍ラヌ也。此事申ニツケテ憚
-  あれど深く憑奉りて久なりぬ。いかでかは隔奉らん
+  アレド深ク憑奉リテ久ナリヌ。イカデカハ隔奉ラン
-  と思てなんときこゆ。大納言をどろきて。さらばなどか
+  ト思テナントキコユ。大納言ヲドロキテ。サラバナドカ
-  は。とくはの給はざりし。いと安き事也速に御なやみを
+  ハ。トクハノ給ハザリシ。イト安キ事也速ニ御ナヤミヲ
-  やめてん。わたり給へいかにもの給はんままに便よくはから
+  ヤメテン。ワタリ給ヘイカニモノ給ハンママニ便ヨクハカラ
-  ひ侍らんとて帰り給ぬ。うへに。かくときこへ給ふに。さらな／n13l
+  ヒ侍ラントテ帰リ給ヌ。ウヘニ。カクトキコヘ給フニ。サラナ／n13l
-  り。なのめに仰られんやは。いとあさましく心うけれと。かく
+  リ。ナノメニ仰ラレンヤハ。イトアサマシク心ウケレト。カク
-  懇に覚しはからふ事なれば。いなひ給んその用意して
+  懇ニ覚シハカラフ事ナレバ。イナヒ給ンソノ用意シテ
-  僧都のかなひせさせ給へるに。いと事うるはしく法服た
+  僧都ノカナヒセサセ給ヘルニ。イト事ウルハシク法服タ
-  たしくして来り給へり。あやしくげにげにしからずは覚
+  タシクシテ来リ給ヘリ。アヤシクゲニゲニシカラズハ覚
-  ゆれど間なんど立ててさるやうなる方に入れ奉せ給
+  ユレド間ナンド立テテサルヤウナル方ニ入レ奉セ給
-  ふ。うへのうつくしふとりつくろゐて居給へるを一時ば
+  フ。ウヘノウツクシフトリツクロヰテ居給ヘルヲ一時バ
-  かりつくつくとまぼりて弾指をぞ度々しける。かくて
+  カリツクツクトマボリテ弾指ヲゾ度々シケル。カクテ
-  近くよる事なくて。中門の廊に出て物をなんかづきて
+  近クヨル事ナクテ。中門ノ廊ニ出テ物ヲナンカヅキテ
-  帰りにければ。主弥たうとみ給事限りなかりけり。不
+  帰リニケレバ。主弥タウトミ給事限リナカリケリ。不
-  浄を観じて其執をひるがへすなるべし。かく云は人の身／n14r
+  浄ヲ観ジテ其執ヲヒルガヘスナルベシ。カク云ハ人ノ身／n14r
-  のけからはしき事を思とくなり。諸の法みな仏の御
+  ノケカラハシキ事ヲ思トクナリ。諸ノ法ミナ仏ノ御
-  をしへなれど。ききどをき事はをろかなる心にはをこらす。此
+  ヲシヘナレド。キキドヲキ事ハヲロカナル心ニハヲコラス。此
-  観に至りては。目に見へ心にしれりさとりやすく思やすし
+  観ニ至リテハ。目ニ見ヘ心ニシレリサトリヤスク思ヤスシ
-  若人の為にも愛着し自らも心あらん時は必す此相を
+  若人ノ為ニモ愛着シ自ラモ心アラン時ハ必ス此相ヲ
-  思べしと云り。大方人の身はほねししのあやつり朽たる家
+  思ベシト云リ。大方人ノ身ハホネシシノアヤツリ朽タル家
-  の如し。六府五蔵のありさま毒蛇のわだかまるにことな
+  ノ如シ。六府五蔵ノアリサマ毒蛇ノワダカマルニコトナ
-  らず血は体をうるほし。筋次目をひかへたり。わづかにうす
+  ラズ血ハ体ヲウルホシ。筋次目ヲヒカヘタリ。ワヅカニウス
-  き皮ひとへをほへる故に。此諸の不浄をかくせり。粉を
+  キ皮ヒトヘヲホヘル故ニ。此諸ノ不浄ヲカクセリ。粉ヲ
-  施し。たき物をうつせど誰かは偽るかざりとしらざる。
+  施シ。タキ物ヲウツセド誰カハ偽ルカザリトシラザル。
-  海に求め山にゑたる味も一夜へぬれは悉く不浄となり／n14l
+  海ニ求メ山ニヱタル味モ一夜ヘヌレハ悉ク不浄トナリ／n14l
-  ぬ。いはばゑかけるかめに糞穢を入。くさりたるかばねに錦
+  ヌ。イハバヱカケルカメニ糞穢ヲ入。クサリタルカバネニ錦
-  をまとへるか如し。若たとひ大海を傾てあらふ共きよま
+  ヲマトヘルカ如シ。若タトヒ大海ヲ傾テアラフ共キヨマ
-  るべからず。若栴檀をたきてにほはすとも。久くかうばし
+  ルベカラズ。若栴檀ヲタキテニホハストモ。久クカウバシ
-  からじ。況やたましひ去寿尽ぬる後は空くつかのほとりに
+  カラジ。況ヤタマシヒ去寿尽ヌル後ハ空クツカノホトリニ
-  捨つべし。身ふくれくさり乱れて終に白きかばねとなり
+  捨ツベシ。身フクレクサリ乱レテ終ニ白キカバネトナリ
-  真の相を知故に念々に是を厭ひ愚なる者は。かりの
+  真ノ相ヲ知故ニ念々ニ是ヲ厭ヒ愚ナル者ハ。カリノ
-  色にふけりて心をまどはす事たとへば。かうやの中の虫の
+  色ニフケリテ心ヲマドハス事タトヘバ。カウヤノ中ノ虫ノ
-  糞穢を愛するが如しと云へり／n15r
+  糞穢ヲ愛スルガ如シト云ヘリ／n15r