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text:chomonju:s_chomonju710

古今著聞集 魚虫禽獣第三十

710 寛喜三年夏のころ高陽院殿の南の大路に堀あり蝦数千集まりて・・・

校訂本文

寛喜三年夏のころ、高陽院殿の南の大路に堀あり。蝦(がま)数千集まりて、方(かた)きりて食ひ合ひけり。ひとつがひ、ひとつがひ食ひ合ひて、あるいは食ひ殺され、あるいはかた息して腹白(はらじろ)になりてありけり。またまたも多く集まることかぎりなし。

ある者、こころみに蛇(くちなは)を一つ求めて、その中へ投げ入れたりけるに、少しも恐るることなし。蛇もまた飲まむともせず、逃げ去りにけり。京中の者、市をなして見物しけり。

古くも蝦の戦ひはありけるとかや。

翻刻

寛喜三年夏の比高陽院殿の南の大路に堀あり
蝦数千あつまりて方きりてくひあひけりひと
つかひひとつかひくひあひて或はくひころされ或はかたいき
してはらしろになりてありけりまたまたもおほくあつ
まることかきりなしあるもの心みにくちなわを一も
とめてその中へなけいれたりけるにすこしもをそ
るる事なしくちなはも又のまむともせすにけさりに
けり京中のもの市をなして見物しけりふるくも蝦の/s552r
たたかひはありけるとかや/s552l

http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/552

text/chomonju/s_chomonju710.txt · 最終更新: 2021/01/26 22:51 by Satoshi Nakagawa