text:chomonju:s_chomonju663
古今著聞集 草木第二十九
663 順徳院の御時十月のころ侍従宰相定家卿大蔵卿為長卿参内して・・・
校訂本文
順徳院1)の御時、十月のころ、侍従宰相定家卿2)・大蔵卿為長卿3)参内して、おのおの鬼間にて、大和(やまと)・唐(から)の物語して候ひける所へ、御所より蒔(ま)きたる硯の蓋に菊下絵にしたる檀紙を敷きて、菊花を一枝入れて、「両人見て参らせよ」とて、兵衛内侍に持たせて出だされたりければ、定家卿は走り立ちて逃げにけり。為長卿は詩を作りて奉りけるとなん。
いと興あることなり。件(くだん)の詩、尋ねて記すべし。定家卿逃げられけるも4)、さだめてやうあるらん。ゆかしくこそ。
翻刻
順徳院御時十月の比侍従宰相定家卿大蔵卿/s522l
http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/522
為長卿参内して各鬼間にてやまとからの物語し て候ける所へ御所より蒔たる硯のふたに菊した絵 にしたる檀紙をしきて菊花を一枝入て両人見て まいらせよとて兵衛内侍にもたせて出されたりけれ は定家卿ははしりたちてにけにけり為長卿は詩を作 て奉りけるとなんいと興ある事也件詩たつね てしるすへし定家卿にけられけるとさためてやう あるらんゆかしくこそ/s523r
text/chomonju/s_chomonju663.txt · 最終更新: 2021/01/10 22:52 by Satoshi Nakagawa