text:chomonju:s_chomonju651
古今著聞集 草木第二十九
651 康保三年閏八月十五日作物所画所相分かちて殿の西の小庭に前栽を植ゑられけり・・・
校訂本文
康保三年閏八月十五日、作物所(つくもどころ)・画所相分かちて、殿1)の西の小庭に前栽を植ゑられけり。右大将藤原朝臣2)・治部卿源朝臣3)・朝成朝臣4)、中の渡殿に候す。侍臣等、後涼殿(こうりやうでん)の東の簀子(すのこ)に候す5)。次に両所、酒饌をもて男女房(なんにようばう)に賜ふ。
夜に入りて、侍臣、唱歌(しやうが)し管絃を奏す。また尊光6)・永頼7)に花の枝に結ひ付くるところの和歌を取りて、読ませられけり。公卿侍臣8)に仰せて、歌を奉らせけり。右大将延光朝臣9)ぞ題をば奉りける。「十五夜翫後庭秋花(十五夜、後庭の秋の花を翫(もてあそ)ぶ)」とぞ侍りける。
深更に及びて、侍臣、和歌を奉る。保光朝臣10)をして読ませられけり。さらにまた管絃の興ありて、その後、公卿に禄を賜はせけり。
翻刻
康保三年閏八月十五日作物所画所相分て殿西 の小庭に前栽をうへられけり右大将藤原朝臣治 部卿源朝臣朝成朝臣中渡殿に候侍臣等後涼殿 の東のすのこに御次に両所酒饌をもて男女房に たまふ夜に入て侍臣唱哥し管絃を奏す又為光 永頼に花の枝にゆひつくる処の和哥をとり/s513r
てよませられけり公卿朝臣に仰て哥をたて まつらせけり右大将延光朝臣そ題をはたてま つりける十五夜翫後庭秋花とそ侍ける深 更に及て侍臣和哥をたてまつる保光朝臣 をしてよませられけりさらに又管絃の興あ りて其後公卿に禄をたまはせけり/s513l
text/chomonju/s_chomonju651.txt · 最終更新: 2021/01/01 19:40 by Satoshi Nakagawa