text:chomonju:s_chomonju646
古今著聞集 草木第二十九
646(序) 草木者有時以死・・・
校訂本文
草木者有時以死。昔、伊弉諾伊弉冉1)尊、既生木祖句々迺馳、次生草野姫。於戯春有桜梅桃李之花、秋有紅蘭紫菊之花。皆是錦繍之色、酷烈之匂也。然而昨開今落、遅速雖異、随風任露、変衰不遁。似楽有為、可観無常矣。
書き下し文
草木は時有りて以て死す。昔、伊弉諾(いざなぎ)・伊弉冉尊(いざなみ)、既に木祖(きのおや)句々迺馳(くくのち)を生み、次に草野姫(かやのひめ)を生む。於戯(ああ)、春は桜梅桃李の花あり、秋は紅蘭紫菊の花あり。皆これ錦繍の色、酷烈の匂ひなり。しかれども昨(きのふ)開き今落ち、遅速異るといへども、風に随ひ露に任せ、変衰遁れず。有為(うゐ)を楽しむに似て、無常を観ずべし。
翻刻
古今著聞集巻第十九 草木第廿九 草木者有時以死昔伊弉諾伊弉尊既生木祖 句々迺馳次生草野姫於戯春有桜梅桃李之 花秋有紅蘭紫菊之花皆是錦繍之色酷烈之 匂也然而昨開今落遅速雖異随風任露変衰 不遁似楽有為可観無常矣/s508l
1)
底本「冉」なし。文脈により補う。
text/chomonju/s_chomonju646.txt · 最終更新: 2020/12/28 12:03 by Satoshi Nakagawa