text:chomonju:s_chomonju609
古今著聞集 変化第二十七
609 観教法印が嵯峨の山荘に美しき唐猫の・・・
校訂本文
観教法印が嵯峨の山荘に、美しき唐猫の、いづくよりともなく出で来たりけるを、捕らへて飼ひけるほどに、件(くだん)の猫、玉をおもしろく取りければ、法印愛して取らせけるに、秘蔵(ひさう)の守り刀を取り出でて玉に取らせけるに、件の刀をくはへて、猫、やがて逃げ走り1)けるを、人々、追ひて捕らへんとしけれどもかなはず、行く方を知らず失せにけり。
この猫、もし魔の変化して守りを取りて後、はばかる所なく犯して侍るにや。恐しきことなり。
翻刻
観教法印か嵯峨の山庄にうつくしき唐猫のいつ くよりともなくいてきたりけるをとらへて飼ける 程に件のねこ玉をおもしろくとりけれは法印愛/s485r
してとらせけるに秘蔵のまもり刀をとりいてて玉 にとらせけるに件の刀をくはへて猫やかて逃はし けるを人々追てとらへんとしけれともかなはす 行かたをしらすうせにけりこの猫もし魔の変化 してまもりをとりて後ははかる所なくをかして侍 にやおそろしき事也/s485l
1)
「走り」は底本「はし」。諸本により補う。
text/chomonju/s_chomonju609.txt · 最終更新: 2020/11/22 16:30 by Satoshi Nakagawa