text:chomonju:s_chomonju577
古今著聞集 興言利口第二十五
577 権漏刻博士季親といふ者ありけり・・・
校訂本文
権漏刻博士季親1)といふ者ありけり。周易の博士にて、その道におぼえありけれど、風月の方ことなる聞こえなかりけり。
ある文亭の連句の座にのぞみたりけるに、上句の番に当たりて遅く出でければ、その中にむねとの儒者のありけるが、これをあなづりたりけるやらん、
閉口後来客(口を閉づ後来の客)
かく上句をそばにて言ひたりければ、季親、
含陰先達儒(陰を含む先達の儒)
とぞ付けたりける。かの儒者、もの言ふことなかりける。これも利口の過ぎたりけるゆゑなり。
翻刻
権漏剋博士季親といふ物ありけり周易の博士にて 其道におほえありけれと風月のかたことなる聞えなかり けり或文亭の連句の座に望たりけるに上句の 番にあたりてをそく出けれは其中にむねとの儒者 のありけるか是をあなつりたりけるやらん 閉口後来客 かく上句をそはにていひたりけれは季親 含陰先達儒 とそ付たりける彼儒者物云事なかりける是も利口/s457r
の過たりける故也/s457l
1)
菅野季親
text/chomonju/s_chomonju577.txt · 最終更新: 2020/11/04 22:26 by Satoshi Nakagawa