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text:chomonju:s_chomonju574

古今著聞集 興言利口第二十五

574 少将入道善忍といふ人のもとに男の下人ありけり・・・

校訂本文

少将入道善忍1)といふ人のもとに、男の下人ありけり。かの入道、「旅せむ」とて、人に鞍を借りて、その下人して取りに2)やりたりけり。

しばしありて持て来たり。「鞍の具足、何々あるぞ」と問ひければ、「鞦(しりがい)・障泥(あふり)候ふ」など、一々に3)具足言ひて、なほものを言ひ果てぬ気色なりければ、「さてさて、また何かある」と、たびたび言はれて、はばかりたる気色にて、「御おもづらも4)候ふ」と言ひたりける、不思議なるかしづきやうなり。

翻刻

少将入道善忍といふ人のもとに男の下人ありけり
彼入道旅せむとて人に鞍を借て其下人して
ともにやりたりけりしはしありてもてきたり鞍
の具足なになにあるそととひけれは鞦あふり候
なと一候に具足いひて猶物をいひはてぬ気
色なりけれはさてさて又なにかあるとたひたひいはれ
て憚たる気色にて御おもつらに候といひたりけるふし
きなるかしつきやうなり/s450l

http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/450

1)
藤原教信
2)
「取りに」は底本「ともに」。諸本により訂正。
3)
「一々に」は底本「一候に」。諸本により訂正。
4)
「おもづらも」は底本「おもつらに」。諸本により訂正。
text/chomonju/s_chomonju574.txt · 最終更新: 2020/10/27 16:33 by Satoshi Nakagawa