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text:chomonju:s_chomonju526

古今著聞集 興言利口第二十五

526 随身下野武守が娘を秦頼武むかへけるに・・・

校訂本文

随身下野武守が娘を秦頼武むかへけるに、武守、出だし立ててやるとて、物にも乗せずして歩ませけるだに不思議なるに、狩衣にさよみの袴着たる郎等二人を具せさせたりけり。人々、「不思議の行粧(ぎやうさう)なり」と言ひければ、「近衛の舎人が娘、何にかは乗るべき。馬に乗せてややるべかりつらん」とぞ言ひける。

この頼武、何事ゆゑにて侍りけるやらん、周防大夫判官季国1)にあづけ給ひたりけるに、かくなん詠み侍りける。

  風をいたみ周防の浦によりたけがしやうあらんとて篳篥(ひちりき)ぞ吹く

かく詠みければ、やがて許されにけり。

翻刻

随身下野武守かむすめを秦頼武むかへけるに武守
いたしたててやるとて物にものせすしてあゆませける
たにふしきなるに狩衣にさよみのはかまきたる郎
等二人をくせさせたりけり人々ふしきの行粧也
といひけれは近衛舎人かむすめなににかはのるへき馬
にのせてややるへかりつらんとそいひけるこの
頼武なにことゆへにて侍けるやらん周防大夫判官/419r
季国にあつけたまひたりけるにかくなんよみ侍ける
 風をいたみすはふの浦によりたけかしやうあらんとてひちりきそふく
かくよみけれはやかてゆるされにけり/s419l

http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/419

1)
源季国
text/chomonju/s_chomonju526.txt · 最終更新: 2020/10/03 11:53 by Satoshi Nakagawa