text:chomonju:s_chomonju517
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text:chomonju:s_chomonju517 [2020/09/23 22:43] – 作成 Satoshi Nakagawa | text:chomonju:s_chomonju517 [2021/01/19 13:14] (現在) – [校訂本文] Satoshi Nakagawa | ||
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- | 松殿((藤原基房))、摂籙(せつろく)の御時、春日詣とかやに、秦兼国を仮(かり)に召されたりけり。そのころまでは、「府の役、力なし」とて、きらはざりけれども、いと面目なきことなれば、鬢(ひん)をもかき上げず、いまいましげなる褐着(かちぎ)にて参りたりけり。殿下、そのよしを聞こし召して、引きつくろひて参るべきよし、仰せ下されければ、なまじひに鬢かき上げて供奉しけり。 | + | 松殿((藤原基房))、摂籙(せつろく)の御時、春日詣とかやに、秦兼国を仮(かり)に召されたりけり。そのころまでは、「府の役、力なし」とて、きらはざりけれども、いと面目なきことなれば、鬢(びん)をもかき上げず、いまいましげなる褐着(かちぎ)にて参りたりけり。殿下、そのよしを聞こし召して、引きつくろひて参るべきよし、仰せ下されければ、なまじひに鬢かき上げて供奉しけり。 |
その後、「兼国、なほさるやうなり」とて、官人の闕(けつ)に召されけるを、番長下野敦景、上(かみ)に加はるとて、憤り申すとて、瑕瑾(かきん)あるよしを申し入れけり。殿下、そのゆゑを御尋ねありければ、「兼国、あまりにわびしき者にて、後園にみづから井を掘りたる者なり」と申しければ、殿の仰せに、「身につかはれたる瑕瑾なし。よく((「よく」は底本「より」。諸本により訂正。))言ひごとのなければこそ、これをば申すらめ」とて、つひに召されにけり。 | その後、「兼国、なほさるやうなり」とて、官人の闕(けつ)に召されけるを、番長下野敦景、上(かみ)に加はるとて、憤り申すとて、瑕瑾(かきん)あるよしを申し入れけり。殿下、そのゆゑを御尋ねありければ、「兼国、あまりにわびしき者にて、後園にみづから井を掘りたる者なり」と申しければ、殿の仰せに、「身につかはれたる瑕瑾なし。よく((「よく」は底本「より」。諸本により訂正。))言ひごとのなければこそ、これをば申すらめ」とて、つひに召されにけり。 |
text/chomonju/s_chomonju517.1600868597.txt.gz · 最終更新: 2020/09/23 22:43 by Satoshi Nakagawa