text:chomonju:s_chomonju515
古今著聞集 興言利口第二十五
515 中ごろ六の葦毛といふあがり馬ありけり・・・
校訂本文
中ごろ、六の葦毛といふあがり馬ありけり。いづれの御室(おむろ)にか、大法を行なはせ給ひけるに、引き進ぜられにけるを、ある房官に賜はせてけり。
あがり馬とも知らで乗り歩(あり)きけるほどに、ある時、京へ1)出でけるに、知りたる人、道に会ひて、この馬を見て、「いかに、さしもあがり馬の名物、六の葦毛にはかく乗り給へるぞ」と言ひたりけるに、臆して手綱を強くひかへたりけるに、やがてあがりて投げけるに、天逆(てんさか)さまに落ちて、頭(かしら)をさんざんに突き割りにけり。
をかしかりけることなり。
翻刻
中比六の葦毛といふあかり馬ありけりいつれの御室/s410r
にか大法ををこなはせ給けるに引進せられにけるをあ る房官にたまはせてけりあかり馬ともしらてのり ありきける程にある時京人いてけるにしりたる 人道にあひて此馬を見ていかにさしもあかり馬の名 物六のあしけにはかくのり給へるそといひたりけるに をくして手綱をつよくひかへたりけるにやかてあ かりてなけけるにてんさかさまに落てかしらを さむさむにつきわりにけりをかしかりける事也/s410l
1)
「京へ」は底本「京人」。諸本により訂正。
text/chomonju/s_chomonju515.txt · 最終更新: 2020/09/22 12:39 by Satoshi Nakagawa