text:chomonju:s_chomonju511
古今著聞集 興言利口第二十五
511 仁平二年三月二十五日八幡の行幸ありけるに蔵人の判官藤原範貞・・・
校訂本文
仁平二年三月二十五日、八幡1)の行幸ありけるに、蔵人の判官藤原範貞、舞人を勤めたりけるに、宮寺にて、左大臣2)わたくしに奉幣せさせ給ひて、南階を下り給ひけるに、範貞立ち3)向かひて、敬ふ気色なかりけり。
大臣(おとど)、不思議と思して、ひそかに、「われをば知らぬか」と問ひ給ひたりければ、いまだ見知り奉らぬよしを答へ4)申しける。いふばかりなくて、大臣過ぎ給ひにけり。
内覧の大臣を見知り奉らぬ蔵人、不思議なりけることなり。かの範貞は、式部大輔永範5)が息なり。
翻刻
仁平二年三月廿五日八幡行幸ありけるに蔵人判官 藤原範貞舞人をつとめたりけるに宮寺にて 左大臣わたくしに奉幣せさせ給て南階をおり 給けるに範貞云むかひてうやまう気色なかり けりおととふしきとおほしてひそかにわれをはし らぬかととひ給たりけれはいまた見しりたてまつら ぬよしをこまへ申けるいふはかりなくておととすき/s408r
給にけり内覧の大臣を見しりたてまつらぬ 蔵人不思議なりける事也彼範貞は式部大輔永 範か息なり/s408l
text/chomonju/s_chomonju511.txt · 最終更新: 2020/09/17 18:36 by Satoshi Nakagawa