text:chomonju:s_chomonju493
古今著聞集 宿執第二十三
493 藤大納言実国寿永元年に例ならずおはしましけるが清暑堂の御神楽に・・・
校訂本文
藤大納言実国、寿永元年に例ならずおはしましけるが、清暑堂の御神楽に本拍子(もとびやうし)にもよほされければ、子息二人の肩にかかり、おさへて参り給ひけり。
その後、いとど重くなられければ、八条相国の1)御女、大教院一品宮2)の御猶子(いうし)にておはしける人、とぶらひにおはしたりけるに、大納言、狩衣ひきかけて申されけるは、「故内府3)は清暑堂御神楽の末拍子一度をこそ取られたりしに、実国は四度その座をけがす中、二度は本拍子を取り侍り。父にはまさりてこそ侍れ」と申し給ひけり。
父大臣(おとど)は大臣の大将までのぼり給ひけるに、官途の及ばざることをばなほ次にして、音曲・笛などのことを執し思しけるにこそ。されば最後にも、さやうにはのたまひけれ。
つひに同じき二年正月二日、失せ給ひにけり。道の執心、罪ふかきことにや。
翻刻
藤大納言実国寿永元年に例ならすおはしましけるか清 暑堂の御神楽に本拍子にもよをされけれは子息/s393r
二人のかたにかかりをさへてまいり給けり其後いととお もくなられけれは八条相国て御女大教院一品宮の御 猶子にておはしける人とふらひにおはしたりけるに大納 言狩衣ひきかけて申されけるは故内府は清暑堂 御神楽の末拍子一度をこそとられたりしに実国は 四度その座をけかす中二度は本拍子をとり侍り 父にはまさりてこそ侍れと申給けり父おととは 大臣の大将まてのほり給けるに官途のをよは さる事をは猶次にして音曲笛なとのことを執しお ほしけるにこそされは最後にもさやうにはのたまひ けれつゐに同二年正月二日うせ給にけり道の執/s393l
http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/393
心つみふかきことにや/s394r
text/chomonju/s_chomonju493.txt · 最終更新: 2020/09/05 11:45 by Satoshi Nakagawa