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古今著聞集 遊覧第二十二
474 寛治六年十月二十九日殿上の逍遥ありけり・・・
校訂本文
寛治六年十月二十九日、殿上の逍遥ありけり。その時の皇居は堀川院なりければ、その北なる所にて、人々集まりたりける次第に、馬を引かせて北の陣の上をわたして、叡覧ありけり。
人々、三条猪熊にてぞ馬に乗りける。頭弁季仲朝臣1)・頭中将宗通朝臣2)、烏帽子直衣、そのほかの人々は狩衣をぞ着たりける。所の衆・滝口・小舎人あひしたがひけり。
大井川に至りて、紅葉の舟に乗りて、盃酌ありけるには、大夫季房3)・侍従宗輔4)・実隆5)などは、年をさななかりければ、貫首(くわんじゆ)の上にぞ着きたりける。
夜に入りて、集会(しふゑ)の所に帰りて、おのおの冠などしかへて、内裏へ参りて、宮の御方にて和歌を講じけり。まづ盃酌ありけるとかや。
昔はこのこと常のことなりけるに、中ごろより絶えにけり。口惜しき世なり。
翻刻
寛治六年十月廿九日殿上逍遥ありけりその時の 皇居は堀川院なりけれはその北なる所にて人々 あつまりたりける次第に馬をひかせて北陣の上を わたして叡覧ありけり人々三条猪熊にてそ 馬にのりける頭弁季仲朝臣頭中将宗朝臣烏帽 子直衣そのほかの人々は狩衣をそきたりける所衆/s371l
http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/371
瀧口小舎人あひしたかひけり大井川にいたりて紅 葉の舟に乗て盃酌ありけるには大夫季房侍従 宗輔実隆なとは年おさなかりけれは貫首の上 にそ着たりける夜に入て集会の所にかへりて 各冠なとしかへて内裏へまいりて宮の御方にて 和哥を講しけり先盃酌ありけるとかやむかしは此 事つねの事なりけるに中比よりたえにけりくち惜き 世なり/s372r
text/chomonju/s_chomonju474.txt · 最終更新: 2020/08/12 15:56 by Satoshi Nakagawa