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text:chomonju:s_chomonju411
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text:chomonju:s_chomonju411 [2020/06/02 19:23] (現在) – 作成 Satoshi Nakagawa
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 +[[index.html|古今著聞集]] 蹴鞠第十七
 +====== 411 宇治の左府法成寺に参籠せさせ給ひたりける時・・・ ======
 +
 +===== 校訂本文 =====
 +
 +宇治の左府((藤原頼長))、法成寺に参籠せさせ給ひたりける時、片岡の禰宜成房に仰せて、切立(きりたて)せられて、鞠のために家平((賀茂家平))召されけり。
 +
 +執行(某)、鞠二つ参らせたりけるを、左府、家平を召して、この鞠二つが善悪をえられけり。家平申しけるは、「一つは良く候ふ。一つは二重鞠にて候ふ」と申しけるを、左府、「中を見ずして二重鞠と申すこと不審なり。その鞠を上ぐべきなり」と仰せられければ、すなはち件(くだん)の鞠を上ぐるに、両三度上がりて、枝に当たりて裂けぬ。これを見るに、古き鞠の上に薄き皮を覆ひたりけり。
 +
 +左府・徳大寺((藤原実能))の大臣(おとど)両人の御前にこれを召し寄せて御覧ずるに((「御覧ずるに」は底本「からんするに」。諸本により訂正。))まことに二重なりけり。大臣しきりに感じ給ひけるとなん。
 +
 +===== 翻刻 =====
 +
 +  宇治左府法成寺に参籠せさせ給たりける時片岡
 +  禰宜成房に仰て切立せられて鞠のために家平
 +  めされけり執行某鞠二まいらせたりけるを左府
 +  家平をめして此鞠二か善悪をえられけり家
 +  平申けるは一はよく候一は二重鞠にて候と申けるを
 +  左府中をみすして二重鞠と申事不審なり
 +  其鞠をあくへきなりとおほせられけれは則件鞠
 +  をあくるに両三度あかりて枝にあたりてさけぬこれ/s312l
 +
 +http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/312
 +
 +  をみるにふるき鞠のうへに薄き皮をおほひたり
 +  けり左府徳大寺のおとと両人の御まへに是を召寄て
 +  からんするに実に二重なりけりおとと頻に感し
 +  給けるとなん/s313r
 +
 +http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/313
  
text/chomonju/s_chomonju411.txt · 最終更新: 2020/06/02 19:23 by Satoshi Nakagawa