text:chomonju:s_chomonju408
古今著聞集 蹴鞠第十七
408 後二条殿三月のころ白河の斎院へ参り給ひて御鞠会ありけるに・・・
校訂本文
後二条殿1)、三月のころ、白河の斎院2)へ参り給ひて、御鞠会(おんまりゑ)ありけるに、しばしありて、汗衫(かざみ)着たる童、扇をさして、片手より蒔絵の手筥の蓋(ふた)に薄様(うすやう)敷きて、雪を多く盛りて、日隠(ひかくし)の間の御縁に置きて、帰り入りにけり。
御汗など垂りげにて、日隠の間に沓履きながら3)御尻かけて、御手などにては取らせ給はで、檜扇(ひあふぎ)の先にて少しすくひてなりけるが、凍(し)みたる雪もて、御直衣に4)かかりたりけるが溶けて、二重裏にうつりて出でて、むらむらに見えける。さて御鞠ありける、いと美しうやさしくなん侍りける。
翻刻
後二条殿三月の比白川斎院へ参給て御鞠会あり けるにしはしありてかさみきたる童扇をさして 片手より蒔絵の手筥の蓋に薄様敷て雪をお ほく盛て日隠の間の御縁に置て帰入にけり御 あせなとたりけにて日隠の間に沓はきなと御 尻かけて御手なとにてはとらせ給はて檜扇の さきにてすこしすくひてなりけるかしみたる雪もて 御直衣かかりたりけるかとけて二重裏にう つりていててむらむらに見えけるさて御まりありける いとうつくしうやさしくなん侍ける/s306l
text/chomonju/s_chomonju408.txt · 最終更新: 2020/05/25 23:08 by Satoshi Nakagawa