text:chomonju:s_chomonju394
古今著聞集 画図第十六
394 玄象の撥面の絵は消えて久しくなりにたれば知れる人なし・・・
校訂本文
玄象(げんじやう)の撥面(ばちめん)の絵は、消えて久しくなりにたれば、知れる人なし。二条殿(教通)1)仰せられけるは、「玄象が撥面の絵様は、馬上にて打珠(だしゆ)の者、腰に珠をさして舞ひたる姿なり。良道が撥面は、件(くだん)の絵を模して描かれたる」となん。このこと、中納言師時卿2)、記し置き侍り。
しかあるを、良道が撥面、当時その儀なし。もし描き改められけるにや。当時の絵様は、総角(あげまき)の童子、竜に乗りて、水瓶を持ちて、瓶より水を流したるを書きたるなり。
後高倉院3)の御時、孝道朝臣4)、勅定によりて琵琶を造進 しける時、仰せに、「琵琶には作者の名を付くべし」とて、孝道をうつされたるなり。竜に乗りたる総角の童子にて侍るなり。
良道が名も、作者の名を付けられたるとかや。また主(ぬし)の名なりともいふ。いづれか実説に侍らん。尋ぬべし。
翻刻
玄象撥面の絵は消て久しく成にたれはしれる人 なし二条殿(教通)被仰けるは玄象か撥面の絵様は馬 上にて打珠の物腰に珠をさして舞たる姿也 良道か撥面は件絵を模してかかれたるとなん此事 中納言師時卿記し置侍りしかあるを良道か撥面 当時其儀なしもしかきあらためられけるにや たうしの絵様は総角の童子龍に乗て水/s298r
瓶をもちて瓶より水を流したるを書たるなり後 高倉院御時孝道朝臣勅定によりて琵琶を造進 しける時仰に比巴には作者の名を付へしとて 孝道をうつされたる也龍に乗たる総角の童子 にて侍なり良道か名も作者の名を付られたる とかや又ぬしの名なりともいふいつれか実説に 侍らん尋ぬへし/s298l
text/chomonju/s_chomonju394.txt · 最終更新: 2020/05/17 23:45 by Satoshi Nakagawa