text:chomonju:s_chomonju372
古今著聞集 相撲強力第十五
372 相撲宗平儀同三司の御もとへ参りたりけり・・・
校訂本文
相撲宗平1)、儀同三司2)の御もとへ参りたりけり。時弘は、その御弟隆家の帥3)の御方へ参りたりけり。帥の仰せによりて、時弘しきりに宗平を手こひて、「もし負くるものならば、時弘が首を切られん。宗平負けば、また宗平が頭(かしら)を切らん」など申しけるを、宗平、あながちに固辞せずして、すなはち立つままに時弘をかき抱(だ)きて、地に投げ伏せたりければ、時弘、しばしは動かざりけり。帥、やすからずや思しけん、涕泣し給ひけるとぞ。大臣(おとど)4)、宗平に禄を賜はせけるとなむ。時弘、「出づ」とて、怒(いか)りて門の関の木を折りてけり。
ある時、頼光朝臣5)、備前守にてありける時、時弘が家に行きて見ければ、みづから犁(すき)を引く者ありけり。頼光、怪しみ見ければ、時弘にてぞありける。
翻刻
相撲宗平儀同三司の御もとへまいりたりけり時弘は その御弟隆家の帥の御方へ参りたりけり帥の仰に よりて時弘しきりに宗平をてこひて若まくる物 ならは時弘かくひをきられん宗平負は又宗平か頭を きらんなと申けるを宗平あなかちに固辞せすして 則立ままに時弘をかきたきて地になけ伏たりけれは 時弘しはしはうこかさりけり帥やすからすやおほしけん 涕泣し給けるとそおとと宗平に禄をたまはせける となむ時弘いつとていかりて門の関の木を折て けりある時頼光朝臣備前守にてありけるとき時 弘か家に行て見けれは身つから犁を引物ありけり/s272r
頼光あやしみ見けれは時弘にてそありける/s272l
text/chomonju/s_chomonju372.txt · 最終更新: 2020/05/07 21:15 by Satoshi Nakagawa