text:chomonju:s_chomonju363
古今著聞集 馬芸第十四
363 後白河院の御時鎌倉前右大将御馬を百疋参らせたりける・・・
校訂本文
後白河院1)の御時、鎌倉前右大将2)、御馬を百疋参らせたりける。
下野敦近、召次所(めしつぎどころ)に候ひけるを召して、乗せられけるに、冬のことなりければ、いと寒かりけるに、敦近、肌に帷子(かたびら)ばかりを着て参りたりければ、寒げに見えけるが、御馬の数つかうまつりにければ、汗ぐみにけり。かねて用意したるほど、いみじく見えけり。
叡感ありて、御馬一疋えりて賜ふべきよし、仰せられければ、承はりける時、乗りたりける御馬を、さうなく申し給ひにけり。乗り出でて後、中門に候ひけるに、宿衣(しゆくえ)一領賜はせければ、肩3)にかけて出でけり。ゆゆしくぞ見えける。
翻刻
後白川院御時鎌倉前右大将御馬を百疋まいら せたりける下野敦近召次所に候けるをめしてのせ られけるに冬の事成けれはいとさむかりけるに敦 近はたにかたひらはかりをきてまいりたりけれは 寒けに見えけるか御馬の数つかうまつりにけれは 汗くみにけりかねて用意したるほといみしくみえ/s264r
けり叡感ありて御馬一疋ゑりて給へきよし仰ら れけれはうけ給ける時乗たりける御馬を左 右なく申給にけり乗いてて後中門に候けるに 宿衣一領給はせけれは扇にかけて出けりゆゆ しくそ見えける/s264l
text/chomonju/s_chomonju363.txt · 最終更新: 2020/05/05 12:41 by Satoshi Nakagawa