text:chomonju:s_chomonju338
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text:chomonju:s_chomonju338 [2020/04/25 22:44] – 作成 Satoshi Nakagawa | text:chomonju:s_chomonju338 [2020/06/20 23:41] (現在) – Satoshi Nakagawa | ||
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===== 校訂本文 ===== | ===== 校訂本文 ===== | ||
- | 十二年の合戦((前九年の役))に貞任((安倍貞任))は討たれにけり。宗任((安倍宗任))は降人になりて来たりければ、優(いう)して使ひけり。嫡男義家朝臣((源義家))のもとに朝夕伺候しけり。 | + | 十二年の合戦((前九年の役))に貞任((安倍貞任))は討たれにけり。宗任((安倍宗任))は降人になりて来たりければ、優(いう)して使ひけり。嫡男義家朝臣((源義家))のもとに朝夕祗候しけり。 |
ある日、義家朝臣、宗任一人を具してものへ行きけり。主従ともに狩装束にて、靫(うつぼ)をぞ負へりける。広き野を過ぐるに、狐一疋走りけり。義家、靫より雁股(かりまた)を抜きて、狐をかけけり。「射殺さんは無慚(むざん)なり」と思ひて、左右の耳の間をすりざまに、しりへ至りければ、矢は狐の前の土に立ちにけり。狐その矢に防がれて、倒(たふ)れて、やがて死ににけり。宗任、馬より下りて、狐を引き上げて見るに、「矢も立たぬに死にたる」と言ひければ、義家見て、「臆((「臆」は底本「憶」。諸本により訂正。))して死にたるなり。殺さじとてこそ射は当てね、今生き返りなむ。その時放つべし」と言ひけり。 | ある日、義家朝臣、宗任一人を具してものへ行きけり。主従ともに狩装束にて、靫(うつぼ)をぞ負へりける。広き野を過ぐるに、狐一疋走りけり。義家、靫より雁股(かりまた)を抜きて、狐をかけけり。「射殺さんは無慚(むざん)なり」と思ひて、左右の耳の間をすりざまに、しりへ至りければ、矢は狐の前の土に立ちにけり。狐その矢に防がれて、倒(たふ)れて、やがて死ににけり。宗任、馬より下りて、狐を引き上げて見るに、「矢も立たぬに死にたる」と言ひければ、義家見て、「臆((「臆」は底本「憶」。諸本により訂正。))して死にたるなり。殺さじとてこそ射は当てね、今生き返りなむ。その時放つべし」と言ひけり。 | ||
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なりて来りけれは優してつかひけり嫡男義家/s247r | なりて来りけれは優してつかひけり嫡男義家/s247r | ||
- | 朝臣のもとに朝夕祇候しけり或日義家朝臣宗 | + | 朝臣のもとに朝夕祗候しけり或日義家朝臣宗 |
任一人をくして物へ行けり主従ともに狩装束に | 任一人をくして物へ行けり主従ともに狩装束に | ||
てうつほをそおへりけるひろき野を過るに狐一疋 | てうつほをそおへりけるひろき野を過るに狐一疋 |
text/chomonju/s_chomonju338.1587822241.txt.gz · 最終更新: 2020/04/25 22:44 by Satoshi Nakagawa