ユーザ用ツール

サイト用ツール


text:chomonju:s_chomonju321

古今著聞集 好色第十一

321 妙音院の大臣忍びたる女を迎へさせ給ひて・・・

校訂本文

妙音院の大臣(おとど)1)、忍びたる女を迎へさせ給ひて、尾張守孝定2)に、「夜の明けんほど、はからひて申せ」と仰せられたりけるに、やうやうよくなりにける時、

 酒軍在座 (酒軍座に在り)

 菟園之露未晞 (菟園の露未だ晞(かは)かず)

 僕夫待庵 (僕夫庵に待ち)

 鶏籠之3)山欲曙 (鶏籠の山曙(あ)けなんと欲す)

この句を朗詠にしたりけり。

孝定が所為、かくこそあらまほしきことなれば、いといみじきことなりかし。

翻刻

妙音院のおとと忍たる女をむかへさせ給て尾張守孝定
に夜のあけん程はからひて申せと仰られたりけるにやうやう
よく成にける時酒軍在座菟園之露未晞僕夫待
菴雞籠山欲曙この句を朗詠にしたりけり孝定か
所為かくこそあらまほしき事なれはいといみしき事
なりかし/s221r

http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/221

1)
藤原師長
2)
藤原孝定
3)
底本「之」なし。『新撰朗詠集』により補う。
text/chomonju/s_chomonju321.txt · 最終更新: 2020/04/18 19:23 by Satoshi Nakagawa