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古今著聞集 孝行恩愛第十
309 建春門院は兵部大輔時信が女なり・・・
校訂本文
建春門院1)は兵部大輔時信2)が女(むすめ)なり。小弁とて後白河院3)にさぶらはせ給ひけり。御寵愛ありて、高倉院4)を生み奉らせ給ひてけり。東宮に立たせ給ひて、仁安三年御譲位ありけり。
御即位の日、女院、皇太后宮に立ち給ひて後、朝覲(てうきん)の行幸ありけるに、宮5)、簾中におはしますを、主上6)、拝し参らせさせ給ひけるを、昔、肩を並べ参らせられたりける上臈女房誰(たれ)とかや、宮の御そばへ参りて、「この御めでたきをば、いかが思し召す」と問ひ参らせられければ、「前(さき)の世のことなれば、何とも思えず」とぞ7)仰せられける。ゆゆしかりける御心なるべし。
翻刻
建春門院は兵部大輔時信か女也小弁とて後白河院に さふらはせ給けり御寵愛ありて高倉院をうみたてまつ らせ給てけり東宮にたたせ給て仁安三年御譲位ありけり 御即位の日女院皇太后宮に立給て後朝覲の行幸あり けるに宮簾中にをはしますを主上拝しまいらせさせ給ける をむかし肩をならへまいらせられたりける上臈女房た れとかや宮の御そはへまいりて此御めてたきをはいかか/s213r
おほしめすと問まいらせられけれはさきの世の事なれは 何ともおほえすそ仰られけるゆゆしかりける御心なるへし/s213l
text/chomonju/s_chomonju309.txt · 最終更新: 2020/04/16 17:10 by Satoshi Nakagawa