text:chomonju:s_chomonju298
古今著聞集 術道第九
298 宇佐大宮司なにがしとかや癩病を受けたるよし聞こえありて・・・
校訂本文
宇佐大宮司1)なにがしとかや、癩病(らいびやう)を受けたる2)よし聞こえありて、一門の者ども、改補(かいほ)せらるべきよし、訴へ申しければ、大宮司、馳せ上りて、医師に見せられて実否(じつぷ)を定めらるべきよし、奏し侍りければ、和気・丹波のむねとある輩(ともがら)に御尋ねありけり。中原貞説も、同じく召しに応じて、御尋ねにあづかりけり。
おのおの白𤺺3)といふ病のよしを奏しけり。療治すべきよしの勘文を奉るべきよし、仰せ下されければ、面々にまかり出でて、注(しる)して参らすべきよし申しけるに、貞説申けるは、「非重代の身にて、一巻の文書のたくはへなし。知りて侍るほどのことは、当座にて勘(かんが)へ申すべし」とて、すなはち注し申しけり。もろもろの医書ども、みなことごとく引き載せて、ゆゆしく注し申したりければ、叡感ありて、申し受くるにしたがひて、和気の姓を賜はせける。後には諸陵正になりて、子孫今に絶えず。
翻刻
宇治大宮司なにかしとかや癩病をうけとるよしきこえ/s208r
ありて一門のものとも改補せらるへきよし訴申け れは大宮司はせのほりて医師に見せられて実 否をさためらるへき由奏し侍けれは和気丹波の むねとある輩に御尋ありけり中原貞説も同 しくめしに応して御たつねにあつかりけり各白𤺺といふ 病のよしを奏しけり療治すへきよしの勘文をたて まつるへきよし仰下されけれは面々にまかり出て しるしてまいらすへき由申けるに貞説申けるは非重 代の身にて一巻の文書のたくはへなししりて侍程の 事は当座にて勘申へしとて則しるし申けり もろもろの医書ともみなことことくひきのせてゆゆしく/s208l
http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/208
注申たりけれは叡感ありて申うくるにしたかひて 和気の姓を給はせける後には諸陵正になりて子孫 いまにたえす/s209r
text/chomonju/s_chomonju298.txt · 最終更新: 2020/04/13 13:27 by Satoshi Nakagawa