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text:chomonju:s_chomonju281

古今著聞集 管絃歌舞第七

281 同じき二年八月新院青海波を御覧じけり・・・

校訂本文

同じき1)二年八月、新院2)、青海波(せいがいは)を御覧じけり。

垣代(かいしろ)の不足に、武者所を召したてられけるに、胡籙(やなぐひ)を負はざりけるを見て、舞人光時3)申しけるは、「白河院4)の御時、この儀ありしには、武者所みな胡籙を負ひて侍りき。今その儀なし。世の陵遅(りようち)、ことにおきてかくのごとし」。

その後、またこの舞を御覧じける時は、武者所に仰せて、胡籙を負ひたりけるは、光時が一言上聞に及びけるにや。光時5)に御馬をぞ賜はせける。

翻刻

同二年八月新院青海波を御覧しけり垣代の不足に
武者所をめしたてられけるに胡籙をおはさりけるをみ
て舞人光時申けるは白河院御時この儀ありしには
武者所みな胡籙を負て侍きいまその儀なし世の
陵遅ことにおきてかくのことしそののち又此舞を御らんし
ける時は武者所に仰せて胡籙を負たりけるは光時か
一言上聞に及けるにや光明に御馬をそたまはせける/s190r

http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/190

1)
康治。280参照。
2)
崇徳上皇
3)
狛光時
4)
白河天皇
5)
「光時」は底本「光明」。諸本により訂正。
text/chomonju/s_chomonju281.txt · 最終更新: 2020/04/08 12:04 by Satoshi Nakagawa