text:chomonju:s_chomonju274
古今著聞集 管絃歌舞第七
274 同じき三年六月二十三日宇治左府内大臣におはしましける時・・・
校訂本文
同じき1)三年六月二十三日、宇治左府2)、内大臣におはしましける時、院の御所(鳥羽殿)近かりける御宿所にて、大殿(知足院殿)3)箏を、大臣(おとど)4)・権大納言5)笙・六条大夫基通6)笛にて御遊びありけるに、孝博7)、月にのりて参じて、琵琶を弾じけり。天曙(あけ)てぞ、大納言帰り給ひける。
同じき二十六日、院の御所にて御遊ありけり。大殿・女房右衛門佐箏、新大納言(宗能)8)、孝博琵琶・内大臣、権大納言(雅定)笙・左衛門尉元正9)笛・能登守季行10)篳篥・宮内卿有賢11)拍子にて、双調(さうでう)・盤渉調(ばんしきてう)の曲を奏せられけり。
夜更けて折櫃(をりびつ)の上に折敷(をしき)を置きて、削氷(けづりひ)をすゑて、公卿の前に置かれけり。院には御台にてぞ供せられける。寝殿の南面にてぞ、この御遊びはありける。孝博・元正は砌(みぎり)のもとに畳を敷きて候ひけり。夜明くるほどにぞ出でにける。
これほどに道に足れる人々の、うちつづき管絃の興ありける、いかにめでたかりけん。ありがたきためしなり。
翻刻
同三年六月廿三日宇治左府内大臣におはしましける 時院(鳥羽殿)御所ちかかりける御宿所にて大殿(知足院殿)箏をおとと権 大納言笙六条大夫基通笛にて御あそひありけるに孝 博月にのりて参して琵琶を弾しけり天曙てそ大納言 帰給ける/s185l
http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/185
同廿六日院御所にて御遊ありけり大殿女房右衛門佐箏 新大納言(宗能)孝博琵琶内大臣権大納言(雅定)笙 左衛門尉元正笛能登守季行篳篥宮内卿有賢拍子 にて双調盤渉調曲を奏せられけり夜ふけて折櫃の うへに折敷をおきてけつりひをすゑて公卿の前にをかれ けり院には御臺にてそ供せられける寝殿の南面にて そこの御あそひはありける孝博元正は砌のもとに畳をし きて候けり夜あくるほとにそ出にけるこれ程に道にた れる人々のうちつつき管絃の興ありけるいかに目出かり けんありかたきためしなり/s186r
text/chomonju/s_chomonju274.txt · 最終更新: 2020/04/06 17:59 by Satoshi Nakagawa