text:chomonju:s_chomonju268
古今著聞集 管絃歌舞第七
268 京極太政大臣内裏よりまかり出で給ひけるに月おもしろかりければ・・・
校訂本文
京極太政大臣(宗輔)1)、内裏よりまかり出で給ひけるに、月おもしろかりければ、心を澄まして車の内にて陵王(りようわう)の乱序を吹き給ひけるに、近衛万里小路にて、小さき人の、陵王の装束をして、車の前にてめでたく舞ふ見えけり。怪しく思えて、車をかけ外して、榻(しぢ)に尻かけて、一曲みな吹き通し給ひにけり。曲の終りに、この陵王、近衛より南、万里小路より東の角(すみ)なる社の内へ入りにける。
笛の曲も神感ありけるにこそ。やむごとなき2)ことなり。
翻刻
京極太政大臣(宗輔)内裏よりまかり出給けるに月おもし ろかりけれは心をすまして車の内にて陵王の乱序を 吹給けるに近衛万里小路にてちゐさき人の陵王の装束 をして車の前にてめてたく舞みえけりあやしくおほえ て車をかけはつして榻にしりかけて一曲みな吹とほし給 にけり曲のおはりに此陵王近衛より南万里小路より東 角なる社のうちへ入にける笛曲も神感ありけるにこそ やむ事なることなり/s182l
text/chomonju/s_chomonju268.txt · 最終更新: 2020/04/04 13:13 by Satoshi Nakagawa