text:chomonju:s_chomonju262
古今著聞集 管絃歌舞第七
262 季通の言はれけるは非管絃者は口惜しきこと・・・
校訂本文
季通1)の言はれけるは、非管絃者は口惜しきこと。
堀河院2)の御時、平調(ひやうでう)にて御遊ありしに、物の音よくしみて、やうやく暁に及ぶに、「五常楽の急、百反に及べば、草木も舞ふなるものを。あるべし」とて、あそばされ侍りしに、五十反ばかりにて天明けければ、時元3)、排(おしひら)きて見るに、庭樹の動くを見て、「さて舞ふめるは」と申しけるを、「めでたき心ばせかな」と人々言ひて感じ思ひけるに、顕雅卿4)、いまだ殿上人にて、無能にてその座に候ふだにかたはらいたきに、奏していはく、「あれは風の吹き候へば動くに侍り」と申したりけるに、満座笑ひけり。
翻刻
季通のいはれけるは非管絃者は口惜事堀川院御時 平調にて御遊ありしに物の音よくしみて漸暁に及に 五常楽急百反に及へは草木も舞なる物をあるへし とてあそはされ侍しに五十反はかりにて天明けれは時元 排てみるに庭樹のうこくをみてさて舞めるはと申ける を目出心はせかなと人々いひて感し思けるに顕雅卿 いまた殿上人にて無能にてその座に候たにかたはら ゐたきに奏云あれは風の吹候へは動くに侍りと申たり けるに満座わらひけり/s174l
text/chomonju/s_chomonju262.txt · 最終更新: 2020/04/02 16:15 by Satoshi Nakagawa